更新日:2006/07/01

第二回 英語教育総合研究会

日時 2006年7月15日(土)13:30-17:15
場所 大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(豊中キャンパス:HP参照)

13:30-14:30 特別講演
「バイリンガル獲得の示唆する英語教育」山本雅代(関西学院大)
14:30-14:40 情報提供(関連研究会・学会・会員報告&展示)
       休憩    
14:50-16:20 ワークショップ
「小学英語を多角的に考える」
司会&コメンテータ:高梨庸雄(ノートルダム女子大)
発表:「小学英語を巡る議論の誤謬」成田一(大阪大)
発表:「教育実践状況の報告と問題点」
①行田隆一(ノートルダム学院小学校)
②田縁真弓(ロングマンピアソン出版・松香フォーニックス)
コメンテータ:山本雅代(関学大)
    休憩
16:25-17:15研究発表
①「日本人の英語リズムの習得プロセス—小学校での英語リズム教育のヒント—」
樽井武(舞鶴高専)
②「遠隔授業による実践的英語教育—テレビ会議システムの利用—」
辻岡圭子(大阪大院生)

参加費:300円  参加資格:なし、非会員参加自由。
会員資格:なし、JACET会員である必要はありません。
研究会費:無料。研究会への会員登録希望の方はお名前とご所属をメールで連絡ください。毎回(4−7月2回、9−12月2回)詳しい発表内容を配信します。

懇親会:17:30-19:00
(当日参加も可能ですが、参加希望の方はできれば事務局にメールください。)
場所:大阪大学大学院言語文化研究科旧棟大会議室
費用:教員−1300円 院生−1000円

問い合わせ:事務局 email: suzuki-k@tachibana-u.ac.jp
発表申し込み:大阪大学大学院 成田研究室 email: narita@lang.osaka-u.ac.jp

概要

特別講演「バイリンガル獲得の示唆する英語教育」

講師プロフィール:山本雅代(関西学院大教授)

日本における「第1言語としてのバイリンガリズム」研究の第一人者。教育学博士。異文化間教育学会理事。著書に『バイリンガル』(大修館書店)、『バイリ ンガルはどのようにして言語を習得するのか』(明石書店)、Language Use in Interlingual Families: A Japanese-English Sociolinguistic Study (Multilingual Matters)など。論文多数。

概要:バイリンガルはどのように2つの言語を習得していくのか、そしてその習得のメカニズムに、モノリンガルの外国語学習に何か示唆するところはあるか、 この2点を中心に話を進めたい。まずバイリンガルとは一体誰のことを指すのかだが、一口にバイリンガルと言っても、それぞれの言語的背景は一様ではなく、 その背景に応じて言語習得の過程にも異なった特徴がみられる。たとえば、生後直後から2つの言語を並行して習得する同時バイリンガルと、1つの言語を習得 した後に別の言語を習得する継続バイリンガルとでは異同がみられる。講演ではバイリンガルとは、さまざまな下位区分を包摂する包括概念であることを確認 し、区分ごとのバイリンガルの言語習得の特徴を、先行研究からの知見を元に概観する。その上で、バイリンガルの言語習得のメカニズムが、日本における英語 教育などモノリンガルの外国語学習に何か示唆するところはないか、考察を試みる。

ワークショップ「小学英語を多角的に考える」

発表:「小学英語を巡る議論の誤謬」

要約:小学校で英語を導入する本質的な根拠は「言語獲得期が英語習得の鍵になる」ことにある。諸外国ではこの認識の下に本格的な英語教育を実施している。 実際、思春期以降と幼児期の獲得では、第二言語の使用で活動する脳領域が若干異なる。「母語が確立した後で外国語を始めないと母語がちゃんと身につかな い」などの見解は言語学的知見の欠落を露呈する思い込みだ。小学校英語では教員も問題だ。英検準二級レベルも怪しい学級担任だと、生徒はカタカナ英語を聴 いて「英語に親しみ」、訛った発音が染みついてしまう。「子どもを把握する能力が優れている」「英語は得意でないけれどALTと英語で関わる姿を見せる」 などを評価する向きもあるが、英語の造詣・技能や英語教育の見識がないと、効果的な授業計画の作成・実施は見込めない。また安易に国際理解の一環とお茶を 濁したのでは言語獲得期が生かされない。歌や遊び、祭りや食べ物の違いを多少知る程度では自己満足に留まる。中学以降に諸国の歴史、文化を対照的に学ぶ方 がしっかり国際理解できる。

発表:「教育実践状況の報告と問題点」

要約:小学校ならびに幼児英語教室における英語教育の実践状況を教育素材や授業の映像も交えて具体的に報告するとともに、それぞれの現場における言語教 育、指導などの面での問題点を提起する。さらに、中学における英語教育との連携の可能性と問題についても検討し、フロアの参加者の方との討議を多角的に行 いたい。

研究発表

①「日本人の英語リズムの習得プロセス—小学校での英語リズム教育のヒント—」

要約:聴く・話すスキルを結ぶ音声、とりわけ日本人の英語リズム習得について考察する。日本人と Native speakers の英語リズムの違い、日本人が英語を身につけていく音声上のプロセスを、日本人英語学習者(初級・中級・上級)とNative speakersとを比較しながら明らかにする。結果として、Native speakers のように英語を聴いたり話したりするための条件を提案したい。また、リズム要因を取り入れた音声訓練の学習効果についても言及する。

②「遠隔授業による実践的英語教育—テレビ会議システムの利用—」

要約:実践的英語コミュニケーション能力に必要な技能は、4技能に留まらない。相手の気持ちを考え、自分の意図を上手く相手に伝えるための戦略的な能力も 必要である。テレビ会議システムを利用した遠隔授業では、異なったコミュニティーの人々と触れ合うことができ、様々な文化や習慣等の理解を促進し、コミュ ニケーションに必要な能力を養うことが可能である。従がって、文化的・歴史的文脈からの総合的、実践的英語教育への応用が期待できる。