更新日:2006/05/01

第一回 英語教育総合研究会

日時 2006年5月13日(土)13:30-17:25
場所 大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(豊中キャンパス)

13:30-13:40 設立総会、
13:40-14:10 基調講演 「なぜ英語教育は学際・総合的でなければならないか」成田一(大阪大)
14:15-15:15 特別講演 「授業の中の文法・語法」八木克正(関西学院大)
15:15-15:20 情報提供(報告&展示)
休憩    
15:30-16:50 ワークショップ
「センター試験のリスニングにどう対応するか—科学的音声教育・現状報告・成績分析—」
成田一(大阪大)、達賀宏紀(神戸龍谷高)、鈴木規巳洋(京都橘大)
休憩
17:00-17:25 研究発表
「"Will"と"Be going to":その意味分析と教え方」和田園子(大阪大院生)

参加費:無料  参加資格:なし、非会員参加自由
会員資格:なし、JACET会員である必要はありません。 入会費:なし

懇親会:17:40-19:00(当日参加も可能ですが、参加希望者は事務局にメールください。)
場所:大阪大学大学院言語文化研究科旧棟大会議室
費用(予定):教員−1500円 院生−1000円

問い合わせ:事務局 email: suzuki-k@tachibana-u.ac.jp


基調講演「成田一講師」プロフィール
日英語構造、機械翻訳の言語処理と評価法を研究。小学校での英語導入と中高大の連携問題についても新聞雑誌等で持論展開。著書『名詞』(研究社)、『こう すれば使える機械翻訳』(バベルプレス)、『日本語の名詞修飾表現』(くろしお出版)、『パソコン翻訳の世界』(講談社)、『私のおすすめパソコンソフ ト』(岩波書店)ほか、新聞、雑誌に掲載、取材記事多数。情報通信技術研究交流会運営委員。授業学研究委員会「授業改善WG」代表(関西)。言語教育談話 会代表。英語教育総合研究会代表。

基調講演「なぜ英語教育は学際・総合的でなければならないか」概要
ゆとりの教育で授業時間が減り、コミュニケーション能力中心の英語教育になってから、中高生・大学生の英語力が低下の一路を辿った。コミュニケーション能 力は文法能力のほか、談話・社会言語・方略的能力から成るとされるが、中核となるのは文法能力で、それ以外はこれを運用する能力であり、母語教育において 育てるべき能力だ。それを勘違いしたために、英語力の根幹が習得できていない。英文法の理論的、認知的研究の知見を踏まえ、学生が「あ、そうか」と納得で きる形で説明すれば、ことばに対する知的関心を生み、学習動機が創造できる。また、発声のメカニズムが分かるように説明した上で、音読を含む適切な訓練を すれば、聴き話す能力もすみやかに育つ。学習方法や時期については、脳活動イメージングなどの裏づけも重要だ。

特別講演「八木克正講師」プロフィール
現代英語の総合的研究と辞書学が専門。英語語法文法学会会長、日本英語音声学会副会長、日本英語コミュニケーション学会理事。単著書に『新しい語法研究』 (1987)、『ネイティブの直観にせまる語法研究』(1996)、『英語の文法と語法』(1999)など。『ユースプログレッシブ英和辞典』 (2004.小学館)編集主幹。『現代英語語法辞典』(2006.三省堂)編集。近年、学会発表、シンポジウム、講演で、英語学習文法の内容批判を展開。

特別講演「授業の中の文法・語法」概要
日本の英語教育の改善のためには、教育の中味を見直すことが必要であるというのがこの話の中心である。英語教育には欠かせない英和・和英辞典、学習参考 書、問題集の中味に問題が山積している。そのことに気づいて改良に向かわない限り、日本の英語教育は良くはならないだろう。学生・生徒ばかりでなく教師が 学ぶもとになる辞書や文法書などが充実していなければならない。その肝心の辞書や文法書に、余計なこと、間違ったことが多く含まれているとしたら、それは 由々しき問題である。『英語教育』誌QB回答者として、また、小学館ホームページ「ランゲージワールド」上の「語法の鉄人」(2001年2月~2006年 2月まで163回連載)で、折に触れそのことを指摘してきた。学校で教える文法・語法に、難しいこと、奇をてらったことなど必要ない。必要最小限のミニマ ルエッセンシャルを掴み出し、それを教えなければならない。

ワークショップ「センター試験のリスニングにどう対応するか」概要
センター試験においてリスニング・テストが実施されるようになり、これにどう対応するかということが高校では問題になっている。大学側にも影響がある。そ こで、①センター試験のリスニング・テストの難易点と成績をTOEICの場合と比較して分析する(鈴木)。また、②高校の普通クラス、英語科クラスにおけ るカリキュラム面での対応について報告する(達賀)。さらに、③高校だけではなく大学においても必要となる現代的な音声教育について、「ダイナミックな音 声変化のメカニズム」の観点から論じるとともに、世界初の「発声生理のMRI動画」や「個人のMRIデータを基に成型された声道模型」、それに「脳イメー ジングに見る音読の効果」など、科学的な研究の紹介も行う(成田)。

英語教育総合研究会の設立趣意書

Integrated English Education Colloquium

日本の英語教育は、近年実践英語に傾倒する傾向が顕著だが、これは必ずしも望ましいことではない。確かに従来の文法・訳読を主体とする英語教育が「聞き・ 話す」といった実用面で学生や親、社会・企業の要望に応えるような成果を上げてきたとは言えない。しかし、これは音声面での教育がこれまでまともに行われ てこなかったことの必然的な結果であり、従来の英語教育を全て否定する根拠にはならない。

英語とは極めて異質な日本語を母語とする学習者が対象となる日本の英語教育において、従来の学校教育への反動のように文法・訳読を否定すると、英語力の中 核能力を否定することになる。言語獲得期を生かして言語差の壁を越えるという意図もあって、小学校でも英語教育を導入したが、成果を上げる国々と較べ、教 師の能力や時間、教材、内容全てにおいて全く不適切・不十分な現状では、英語教育の切り札にはなりそうもない。英語教育について社会や学習者に誤った思い 込みや認識があるとすれば、是正していかなくてはならない。これはカリキュラムの策定や効果的な授業の運営においても重要なことである。英語と同質な欧米 諸言語における研究や授業方法・理論に追従するような対応にも批判的な目が必要だ。

英語運用の基礎・根幹となる能力を養い、実践力を育てていくにはどうするべきか、ということについては、極めて多くの関連領域[言語教育・計画、言語学 (対照・理論・認知・心理・社会・コーパスほか、談話・会話分析など)、脳機能イメージング、文学・文化論、翻訳・通訳論&技術、機械翻訳ほか]の最新の 知見をも総動員することが可能な状況になっている。JACETには既存の多くの研究会があるが、いずれも比較的専門化された領域に絞って英語教育を考えて きた嫌いがある。専門領域の研究に留まらず、その成果を有機的につなぎ、さらに関連領域の知見を踏まえて、英語教育を総合科学的な視点から捉え直すことが 現代的な課題となっている。

そうした学際的で総合的な研究領域として英語教育を捉え、言語計画、授業デザイン、授業素材・内容、教育理論・方法、運用技能養成など、英語教育全般に 亘って、研究・提言する目的で「英語教育総合研究会」を設立し、講演、発表、テーマ討議などの研究活動を運営するとともに、その成果をJACET大会にお ける発表ならびに出版を行う。これにより、会員の英語教育を巡る諸問題に関する知見・認識を深め、さらに、望ましい英語教育の在り方・授業運営を小、中、 高校ならびに大学教師、学習者、一般にも提示し啓発するものとする。


運営方法

  • (夏季・春季休暇を除く校務などが繁忙ではない時期に)半期に1回程度(4月下旬-7月中旬;10月-12月上旬)を目安に研究会を開く。(関連学会の開催日を避け、)原則として土曜ないし日曜日13:00-17:30(時間は延長あり)に開催する。

  • 代表ならびに幹事を置く

  • (JACETの諸研究会など)英語教育諸分野ほか関連領域の研究者を講師として招き、研究成果を報告していただく。

  • 講演(プロフィール200字、概要400-600字をつけ案内):約40-45分の講演と15-20分の質疑応答を行う。

  • トピック討議:(メールないしその場で発題、)メンバーは英語教育に関わる問題を中心に意見交換をしたいテーマを気軽に提起・説明し、それについて自由な討論を行う。約60-80分