更新日:2023/07/27

第20回 英語教育総合学会

日時:924日(日)13301700

場所:オンラインで開催。Google Forms  https://forms.gle/yLBwq1jj3SGXBvFR7

にアクセスのうえ、9月15日までに参加申込をお願いいたします。

9月20日頃までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。

シンポジウム『AI翻訳と英語教育-開発者を迎えて-

コーディネーター:成田一(大阪大)

開会の辞:AI翻訳までの道程

特別講演「AIによる翻訳・通訳の自動化」

隅田英一郎(情報通信研究機構)

開発者から見た、生成AIによる機械翻訳の変化

瀬沼祐一(ロゴヴィスタ)

AI翻訳の実力」

成田一(大阪大)

「プロジェクト発信型英語:発信力育成とテクノロジーの挑戦」

近藤雪絵(立命館大)

「機械翻訳活用による小学校外国語教育と国語教育の連携」

成田潤也(厚木市立鳶尾小学校)

AI翻訳の授業実践――効果的活用に向けて」

蔦田和美(関西外大)

 

参加費:無料、参加申し込み:学会HP参照。

問い合わせ先:事務局orchid-e@kcc.zag.ne.jp

 

講演概要

特別講演「AIによる翻訳・通訳の自動化」

翻訳・通訳は人間の知的活動の一つである。また、職業としての翻訳・通訳は、長年の努力によって語学に習熟することによってのみ為しうるものと考えられる。その自動化は第2次大戦直後に研究が開始され数次にも亘るパラダイム・シフトを経て進化してきた。翻訳・通訳の自動化に必要な要素技術は、近年著しい進化を遂げている人工知能の基盤技術であるところの深層学習に、好適である。この深層学習によって、2016年以降、翻訳・通訳は急速に高精度化し多言語化も大いに進んだ。そして2025年の大阪・関西万博でも同時通訳システムが活用されるところまで実力を延ばした。本講演ではその仕組や社会への影響について述べる。

 

開発者から見た、生成AIによる機械翻訳の変化

 ChatGPTに代表される生成AIの急激な高性能化と普及により、機械翻訳の新しい選択肢として、人間同様に多能なAIに言葉(プロンプト)で翻訳を指示する手法をだれでも利用可能な環境が到来した。本発表では、生成AIによる翻訳は利用者にとって、ルールベースや翻訳AIを使用した既存の機械翻訳とどのように異なり、それは実際の機械翻訳の活用シーンにどのような変化をもたらし得るのか。それぞれの手法を採用する機械翻訳ソフトを開発、販売する企業の企画・開発担当者という立場からの予測を紹介したい。

 

AI翻訳の実力」

AIの深層学習による異次元の翻訳精度を誇る翻訳プログラムは2016年からリリースされたが、新規の言語データを日々消化して更に高度化している。その英語力を日本の大学受験生の英語力と比較する意味でも、大阪公立大学英語試験(2023)の機械訳を予備校の解答例と比べて解説する。AI翻訳は対応する文脈を含む膨大な言語データを解析して翻訳できたということで、「原文の意味を理解して」翻訳するわけではない。AI翻訳が意味を理解できないことから誤訳になったとしても、誤訳箇所を見抜く方策はある。AI翻訳としては『Google翻訳』、『DeepL翻訳』のほか、ロゴヴィスタの『翻訳powered by chatGPT』を取り上げ、その訳文を分析評価して、AI翻訳の可能性と課題と文化対応における人間との共生について考えてみたい。

 

「プロジェクト発信型英語:発信力育成とテクノロジーの挑戦」

立命館大学では、4学部(薬学部、生命科学部、スポーツ健康学部、総合心理学部)でプロジェクト発信型英語プログラムを導入し、学生の発信力育成に取り組んでいる。薬学部・生命科学部では、2022年度よりPBL型次世代英語教育プラットフォームの開発を目指し、機械翻訳をはじめとするAI技術の多角的な活用を積極的に推進している。本講演では、薬学部の事例を通じて、6年間の教育プロセスでの英語教育の実践とAIをはじめとしたテクノロジーの活用、学生発信力育成への具体的な取り組みを明らかにする。

 

「機械翻訳活用による小学校外国語教育と国語教育の連携」

数年前に高精度機械翻訳が登場したかと思えば、いまや生成系AIが世を席巻している。AI技術の発展によって、従来の「知識・技能」偏重の学習観がいよいよその説得力を失いつつある今、外国語教育(特に小学校における)では何が指導されるべきだろうか。本講演では、神奈川県内の公立小学校2校において機械翻訳を活用した複数の授業実践を紹介しながら、外国語と国語の横断的学習の可能性について論じる。あわせて、小学校教育における外国語教育の意義について私見を述べる。

AI翻訳の授業実践――効果的活用に向けて」

AI翻訳は顕著に進化しており、英語教育との関係性を整理し、明示化する必要があると思われる。本発表では、AI翻訳の英語教育への導入の意義を考えるとともに、AI翻訳を導入した授業実践例およびその経過を報告する。授業の一環としてAI翻訳に向き合うことにより、MT (machine translation) literacy習得に向けての一定の効果、発信力の向上、およびその効果的使用のための自身の英語力の重要性を認識する効果も検証されている。未だ試行錯誤で導入の手法に正解は見つからないが、今後のより適切な導入のかたちおよび指導法を参加者の皆様と考えたい。