更新日:2014/12/05

第9回 英語教育総合学会

日時:1月11日(日)13:00-17:15
場所:関西学院大学 大阪梅田キャンパス
  K.G.ハブスクエア大阪(アプローズタワー10階)

シンポジウム
統合的リーディングで育む総合英語力

「学生はリーディングが好き」(調査報告)磯部理一郎(大阪市立大学)

「視覚と聴覚を動員するリーディング:読解も音読も構造解析がコア」成田一(大阪大学)

「音読を核にした4技能を伸ばすラウンド制指導法とその効果」鈴木寿一(京都外国語大学)

「リスニング能力開発も狙ったリーディング授業の取り組み」植松茂男(京都産業大学)

「シャドーイングで伸ばすReading Fluency」門田修平(関西学院大学)

「文法とリーディングで伸ばすライティング力」蔦田和美(京都産業大学)

「ESPリーディングで伸ばす運用力」川越栄子(神戸女学院大学)

全体討議『総合的な運用力を目指すリーディングの方略』

参加費:500円
一般の方の参加歓迎。直接会場にお越し下さい。駐車場はありません。
問い合わせ:事務局 orchid-e [AT] kcc.zaq.ne.jp (メール送信の際は [AT] を @ に変更してください)

シンポジウムの理念

「コミュニケーション英語」が20余年経過後も、目標とする成果を上げるどころか英語力の全般的な低下を招いているのに、文科省は高校で「英語で授業」を強制し、その実態の検証もないまま2020年には中学でも「英語で授業」を実施する方針を公表した。英語が壁となり生徒が授業内容を理解できず学習意欲が削れる事態がもたらされるなど、無責任な英語教育行政によって、現場の英語教育が歪められている。本シンポジウムでは、高度な読解力を育んできた伝統的な(文法訳読式)教育の効果を再検討するとともに、リーディングを中心に4技能を統合的に育成する実践方略を踏まえて、「日本人に相応しい英語教育」について考えたい。

講演概要

成田講師:母語の応用の効かない外国語の教育では、文法をしっかり教え読解における構造解析で鍛え音読させる。その基盤から過去の書籍読解を含む「時空を超えるコミュニケーション力」が育つ。

鈴木講師:狭義の第二言語としてではなく、外国語として英語を学ぶ日本人学習者のために開発され、実践を通して改良されてきたラウンド制指導法の流れとその効果について概説する。

植松講師:リーディング授業にシャドーイングを導入し、英語リスニング力をつける試みを紹介する。テキストの難度を変えて比較し、教授言語についても相応しいものを調べる。

門田講師:読解では文字言語の音韻符号化を経て、音韻ループを活用した処理が必須だ。シャドーイング訓練が、いかに音韻ループ内の処理を促進し、読解力を向上させるか検討する。

蔦田講師:オーセンティック素材による文法力向上の実践方法、リーディング力との相関関係、およびライティング力への効果の要因別分析結果を、学生の姿勢の変化とともに紹介する。

川越講師:学生は、将来進む専門分野の内容の英文を読むことで、その分野への興味が深まり、英語学習のモチベーションが高くなり、英語総合力を伸ばすことができることを実例で示したい。

更新日:2014/07/19

第8回 英語教育総合学会

日時:8月7日(木)13:15-17:15
場所:関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G.ハブスクエア大阪(アプローズタワー14階)

シンポジウム
日本人の脳と英語の習得と運用

特別講演 「脳科学からみた母語獲得と外国語学習」萩原裕子(首都大学東京)

「英語学習におけるシャドーイングの効果:インプットとアウトプットを繋ぐ」門田修平(関西学院大学)

「音読・速読による脳内文法操作の高速化」成田一(大阪大学)

全体討議
『(英語での授業を阻む)運用のハンディを越えられるか』

参加費:500円
一般の方の参加歓迎。直接会場にお越し下さい。駐車場はありません。
問い合わせ:事務局 orchid-e [AT] kcc.zaq.ne.jp (メール送信の際は [AT] を @ に変更してください)

シンポジウムの理念

日本の中高の英語教育は、コミュニケーション偏重の中、文法・語彙だけでなく発音教育までが軽視され英語基盤が脆弱化したが、昨年から高校で「英語での授業」が始まっている。文科省は「外国語教育の目標はコミュニケーション力の養成だけである」と断じているが、基礎学力が育成されないままこうした授業形態を採っても、目標は達成できない。本シンポジウムでは脳科学における外国語獲得と学習についての最新の知見を紹介するとともに、脳内言語処理の観点から、日本人にとって効果の期待できる英語運用力の育成方法を理論と実験の両面から探り、今後の「日本の英語教育の姿」も展望しつつ、激動する英語教育の現状への対応を考えたい。

講演概要

萩原講師:外国語の学習は、母語を獲得するようには容易ではない。日本人にとって英語習得の難しさは、言語構造の違いや学習環境の乏しさと考えられているが、外国語の学習は脳の可塑性によるところが大きい。母語であれ外国語であれ、人間が言語機能を獲得する際に、脳内でどのような変化が起きているのだろうか。講演では、脳の発達と言語習得の神経基盤をもとに、母語獲得と外国語習得のプロセスの類似点と相違点について概観する。

門田講師:第二言語習得理論は、学習者のインプットおよびアウトプット活動を通じて、英語を「知っている」から「できる」状態に変貌させることの重要性を明らかにしている。しかし、インプットをアウトプットに結びつけるには、その中間に音声言語をターゲットにした豊富なプラクティス(反復プライミング)が必須になる。講演では、音読と並んで、このトレーニング効果が期待できるシャドーイングを取り上げ、その効果について論じる。

成田講師:言語獲得期を過ぎてからの英語学習は日本人にとって極めて大きなハンディで、コミュニカティブ・アプローチなど、欧米で成功した学習法をそのまま適用しても無理がある。単に言語構造の違いではなく、日本語にないWH移動や数、時制の一致のような瞬間的な操作が乗り越えがたい壁となっている。従来、言語差を扱った論考においても、具体的に何が問題か探った例はない。講演では、瞬間的操作を念頭に、日本人に相応しい英語教育を論じる。

関連情報


更新日:2014/01/28

関連学会情報


関西英語教育学会セミナー
『英語教育をめぐる多様な論争を超えて』(2月1日):
金谷憲「高校英語授業改革からこれからの英語教育を考える」ほか


小学校英語教育学会京都支部(KEET)研究会
『小学校英語活動の評価』(2月9日):
バトラー後藤裕子「経済格差と小学校英語教育:アジアと日本における現状と展望」ほか


児童英語教育研究会ワークショップ
日時:2月23日(日)13:00~17:00
場所:関西学院大学梅田キャンパス(アプローズタワー10F)
内容:「音のメカニズムを学ぶ講演会」

講演

「英語らしい発音の科学・ダイナミックメカニズムと発音・聴解の秘儀」成田一(大阪大)

「シャドーイングによる自動化のメカニズム」門田修平(関学大)

参加費 1000円(どなたでも参加できます)
問合せ OBK(児童英語講師自己研鑽の会)事務局 obkosaka [AT] gmail.com
(メール送信の際は [AT] を @ に変更してください)

第7回英語教育総合学会報告

英語教育総合学会の皆様

最近の英語教育行政の動向の中で、英語教育に危機的な状況が生まれています。自民党の教育再生実行本部が突然「TOEFLを大学入試と大学卒業要件にする」という答申を出しているほか、4月からの「英語で授業」実施の影響がいろいろ高校の現場に出ているだけでなく、その検証もないまま中学校でも「英語で授業」を実施する方針が発表されました。10月には新たに文科省が「小学校英語教科化」の方針を公表しましたが、教育態勢については問題が山積しています。12月14日(土)13:00-18:00(予定より30分超過)に神戸女学院大学において開催された第7回の英語教育総合学会のシンポジウム『激動する日本の英語教育―「英語で授業」と「小学校英語教科化」の先に―』においては、小学校英語反対の旗手大津由紀雄先生に特別講演に招き、全体討議では90名近い参加者の方々との質疑応答と意見交換を行いました。各講師の講演の概要は下記の通りです。特に大津先生と成田とは白熱の討議を交わしており、小学校英語導入の問題点と効果を、理論的にかなり徹底した考察ができたのではないかと思います。この討議については、成田が執筆している(主に翻訳者対象の)連載「翻訳技術の言語的な基盤」(第10回)-早期英語教育で日本人は英語が使えるようになる-」(『The Professional Translator』バベルプレス)において、詳細に取り上げておりますので、ファイルを開いてご覧いただきたいと存じます。(なお、(主な読者層が中高の先生の)『新英語教育』3月号巻頭論文で、日本の英語教育のあるべき姿と方向について論じた「日本人に相応しい英語教育」にも、それを若干簡略化した内容が収録されます。)

会長 成田一(大阪大学名誉教授)



概要(名和俊彦 (関西大(非)) 記す)

大津由紀雄 (明海大学) 「小学校英語の問題をどう考え行動すればよいのか」

政府の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」をどう考え、行動すればよいのかということに関して、4つの注意点がある。第1点は、官邸主導で行われていることである。中教審外国語部会での審議を経て、学習指導要領を作成することになっているが、「英語で行う」ことは全く議題にも挙がらないまま中学・高校で「英語で行う」(中学では「英語で行うことを基本とする」)ことが決定された。第2点は、これまで施行された政策の総括をしないままで、新たな政策の立案をしていることである。小学校5~6年に英語を正式な「教科」に週に3時限分入れ、3~4年に「外国語活動」として週に1~2時限分英語を組み込むというのは、これまでの小学校英語の実施による結果を見ないまま政策が打ち出されている。第3点は、2020年の東京オリンピックやパラリンピックに向けての英語の必要性を理由にした英語教育政策を進めるという世論操縦術である。第4点は、「日本人としてのアイデンティティ」を育成するための国語教育と外国語教育が繋がっていないことである。政府の教育政策には、小学校英語教育の指導者の育成と確保やその財政的な裏付けがない。単純な英文構造が中心の中学英語では、母語でポイントを説明し、習熟するために英語を実際に使うことは大切であるが、高校では複雑な英語の構造の文を扱うようになるので、英語で授業を行うことには問題がある。



江利川春雄 (和歌山大学) 「小学校英語教育の歴史から学ぶ」

小学校英語は明治期に始まり、早期教育の利点や外国人との交流の必要性、将来への英語の必要性等による賛成論、これに対して当時の中等以上の進学者が少ないことや国内での英語の有用性の無さ、小学校での母語教育の重要性、日本語と英語との言語系統の違いに起因する習得の難しさによる反対論があった。Oral Methodを提唱したPalmerも日本での英語教育経験に基づき和訳や日本語の使用を認めた。小学校英語教員の確保と教授法の問題が見えてきたため、中等英語教員有資格者または同等以上の学力のある者を採用することになったという1908年の報告がある。小学校英語の教材、教授書が刊行されたり、音声指導重視の英語テキストがレコード付きで発売されたりした。また、小学校の何年次に何時間教えるのかということもいくつか試みられたが、結局小学校英語教育が下火になった。そして、現在、小学校英語教育が復活してきたが、小学校英語の歴史から学んだことを活かして、次の点に留意して小学校英語を進めていかなければならない。(1)入門期の外国語指導は重要であり、音声面を含めた教員の高い指導力が必要である。(2)外国語学習には一定の思考力が必要である。(3)小学校では母語習得が重要であり、外国語習得の根底となる。(4)高学年では知的で内容豊かな授業展開が必要である。(5)発達段階に応じた多様な教具・指導法が必要である。(6)中学校英語への円滑な移行が必要である。



成田一 (大阪大学) 「地殻変動する日本の英語教育―二つの道の収束に向けて―」

中教審の外国語部会でも審議しないで「英語で授業する」ことを、政府の英語教育計画や学習指導要領に入れ、さらに高校での「英語で授業」の結果の善し悪しを検証もせず、中学で「英語で授業をすることを基本とする」ということを実施することになった。政府は、文法読解法や従来の英語教育の功績を一切顧みないで根拠のない英語教育行政を行ってきている。TOEFLの成績が上位の国々の言語と英語との言語差と、日本語と英語との言語差には大きな隔たりがあることを考慮しなければならない。韓国語と日本語は系統が同じであるが、TOEFLの成績が日本より上にあるのは、韓国の教育事情が日本よりはるかに厳しく、競争が激しいためである。言語差を越えられるのは言語獲得期であり、この時期であれば複数の言語を習得できる。小学校英語教育に関しては、音声教育のまともな研修もしないまま担任に指導させるのではなく、正式な英語教師を採用することも射程に入れながら、当面の間中高を退職した英語教師に小学校英語を担当してもらう方法が考えられる。小学校英語を教えるネイティブの条件、生徒に教えるための研修、音声教育、教えるべき基礎英語等について考える必要がある。



ウェイン・キム (キンダーキッズ) 「英語保育園の取り組み」

英語を外国語ではなくもう一つの言語(an additional language)として学び、国際感覚を持ったバイリンガルの子どもを育てることを英語教育の中核としている。独自に開発した教材で読む・書く・聞くことを学習したり、聞く・話す活動をしたりして、英語を使って学ぶことをしている。生徒20名に対し講師2名で、個々の生徒の発話時間を多くしていることも特色である。literacyの育成にはアルファベットを使用頻度の高い文字から学習し、語の学習にはphonicsを使う他に、phonicsを適用しにくい語には視覚で学ばせるものもある。さらに、年齢による習得語数も設定している。2013年第2回の実績では英検合格者が年長組で5級が100%、4級が82%、3級が55%の合格者が出ている。



植松知奈美 (関西学院初等部) 「関西学院初等部の英語教育」

英語専任教師が教授法、シラバス、授業内容の確認、教材開発を行い、ALTや担任教師とティームティーチングを行う。低学年では、英語を話す活動を中心とし、phonicsとアルファベット文字の読みを学習、中学年では英語を話す活動をしながら語彙を増やし、phonicsを利用して単語や単文の読み書きを学習、高学年では読み、書き、会話に加えて文法を学習するという段階的で系統性を持たせた学習活動が行えるようにしている。これに加えて、国際交流を行い、6年生では生徒がグループで英語のstoryを作り、役を演じるという会話練習も行っている。授業の運営とシラバスをALTに十分に理解してもらうために授業内容、指導案を英訳しておかなければならないことはもちろんのこと、十分な時間をとってALTとミーティングをすることが大切である。



池亀葉子、他2名 (OBK児童英語講師自己研鑚の会)

英語教育の方法論や英語音声学等の知見を取り入れ、簡単な絵と説明で子どもたちにわかりやすく日本語と英語の違いを認識させて、体と口を使って英語を何度もoutputさせ、英語を発することが自動化されることが意図されている。個別のexerciseには子どもたちに親近感を抱かせるように「ベロベロ」等の名称が付けられている。発音は人の顔に口の形を描いた簡単な絵を示して、音楽に合わせて何度も繰り返す。運動を表すmotion wordsも音楽に合わせて、語の表す意味に合わせて体を動かしながら発音して、実感しながら覚えるようにしている。英語を覚えるためのいろいろな工夫と段階があり、最終目標を「お話作り」「英語落語」に設定している。詳細は、本の形で近々公開する予定である。