更新日:2007/11/19

第六回 英語教育総合研究会

日時 2007年12月9日(日)13:00-17:20
場所 大阪大学大学院言語文化研究科新棟大会議室(豊中キャンパス)


13:00-14:00
特別講演:『英語音声の知覚と生成およびその学習』
山田玲子
(ATR認知情報科学研究所主幹研究員、神戸大学国際文化学研究科客員教授)

14:00-14:15
情報提供 (「音読ソフトのデモ」、会員書籍紹介ほか)

休憩
14:20-17:20
シンポジウム:『リスニングの生理と心理―発音の科学の教育への応用―』

発表 成田一 (阪大):英語音韻の生理的特性を踏まえた教授ストラテジー
―発音教育に欠けていたこと―

発表 樽井武 (電通大):英語教育の中のリスニング
―テキスト開発を通して―

発表 石川慎一郎 (神大):日英語の語彙理解と習熟度
―脳賦活に基づく考察―

発表 上田功 (阪大):言語音はどのように獲得されるのか
―音韻理論からの考察―

発表 有本純 (関西国際大):日本人の英語イントネーションとその容認度
―EILの観点に基づく指導への提言―

休憩
コメンテータ 八木克正(関学大:日本英語音声学会副会長)


参加費
:300円(飲料提供)

参加資格:なし、一般の方の参加自由。
ご参加の方は直接会場にお越しください。

問い合わせ
:大阪大学大学院 成田研究室 email: narita@lang.osaka-u.ac.jp

研究会年会費
:無料。
研究会への会員登録希望の方はお名前とご所属をメールで連絡ください。
毎回(4-7月1-2回、9-12月1-2回)詳しい発表内容を配信します。

発表申し込み
:大阪大学大学院 成田研究室 email: narita@lang.osaka-u.ac.jp

懇親会:
17:40-19:00
場所:大阪大学大学院言語文化研究科 旧棟大会議室
費用:教員-1000円 院生-800円(予定)
(当日参加も可能ですが、参加希望の方はできればnarita@lang.osaka-u.ac.jpにメールください。)


概要ほか

特別講演
『英語音声の知覚と生成およびその学習』

山田玲子
(ATR認知情報科学研究所主幹研究員、神戸大学国際文化学研究科客員教授)

講演者プロフィール
神戸大学理学部、大阪大学大学院人間科学研究科を経て、1986年より国際電気通信基礎技術研究所(ATR)にて20年間に亘り、音声知覚・音声言語習得の研究、外国語音声学習技術の研究開発に従事。博士(人間科学)。

概要
音声言語は人間のコミュニケーションを支える重要な機能を担う。複雑で精緻なその仕組みを理解することは困難な課題だが、その研究成果は人 間の諸活動の様々な場面で応用可能である。本講演では、第二言語として英語を学習する日本語母語話者の英語音声知覚に焦点をあてた研究成果を紹介し、学習 教材への応用について論じる。

日本語母語話者を対象とした英語音声の知覚、生成、語彙などをパソコンを利用して一連の学習実験を実施したところ、母語にない外国語の音韻は知覚・学習が困難であるが、(1)音に着目した訓練を行うことにより、成人でも新しい音韻カテゴリーを形成できること、(2)知覚と生成の間には関連があり、訓練効果が互いに転移すること、(3)意味的文脈ばかりに頼った学習は音韻知覚学習を阻害すること、(4)音韻の混同が単語の意味の混同を引き起こすこと、(5)音韻知覚の能力が音声単語の認知処理のボトルネックとなることなどが明らかになった。これらの結果は第二言語の学習における音声の重要性を示唆している。また、20代の学習者と60歳 代の学習者では学習効果に顕著な差がないことが示され、年齢を問わず問題数を重ねることの重要性が示唆された。これらの学習実験で使用した音声情報処理技 術を組み込んだ学習ソフトをデモを交えて紹介しつつ、基礎研究から得られた知見に基づく学習方法への応用についても述べる。

シンポジウム
『リスニングの生理と心理―発音の科学の教育への応用―』


発表 成田一 (阪大):英語音韻の生理的特性を踏まえた教授ストラテジー
―発音教育に欠けていたこと―

発表 樽井武 (電通大):英語教育の中のリスニング
―テキスト開発を通して―

発表 石川慎一郎 (神大):日英語の語彙理解と習熟度
―脳賦活に基づく考察―

発表 上田功 (阪大):言語音はどのように獲得されるのか
―音韻理論からの考察―

発表 有本純 (関西国際大):日本人の英語イントネーションとその容認度
―EILの観点に基づく指導への提言―

コメンテータ 八木克正 (関学大:日本英語音声学会副会長)

概要:
①成田一氏: 英語の発音では調音の位置と様式が隣の音に近づく同化現象が起こるが、これはスムーズに次の音につながるように、生理的な調整を行うためだ。隣接音の発音 が間違っている場合、目標とする音が発音できないが、従来の発音の指導は、個々の音の説明と訓練に留まり、この事態を見落としてきた。発表では正しい発音 のための「生理的な条件」と音変化の生理を踏まえた指導法を考えたい。

②樽井武氏:JACET関西支部のリスニング研究会で現在取り組んでいる大学生用の入門用英語テキスト開発から明らかになった英語を総合的に教育する上でのリスニングに関する問題の中から、a) 学生と教員間の意識の相違、b)、教育目標の設定、c) テキストに適した英語表現等に焦点を当て現状報告と問題提起をする。

③石川慎一郎氏:発表者は,情報通信研究機構(NICT)との共同研究プロジェクトとして,fMRI(機 能的磁気共鳴撮像法)を用い,各種の語彙処理タスク実行時の脳賦活を調査している。日本人英語学習者を対象とした一連の実験によって,学習者が英語語彙の 意味処理と音韻処理を行う場合,脳内の賦活部位および賦活水準が習熟度によって変化することが明らかになってきた。今回の発表では,新たに行った日本語語 彙処理実験の結果と,英語語彙処理実験の結果をまとめて報告したい。

④上田功氏: リスニングには、コンテクストや背景知識に依存するトップダウン的な側面と、純粋に言語音を聴き取りディコードしていくボトムアップ的な側面がある。本発 表では、後者にフォーカスを当て、言語音を聞き取るということは、ある言語音を他の言語音から区別することであるという、いわば相対的な立場に立って、こ れを音韻論から考察していく。具体的には、幼児の言語音獲得の順序や制約、そして言語障害等のデータから示唆されるいくつかの問題について論じる。

⑤有本純氏:文脈情報を与えて、日本人が英語を発話する際に用いるイントネーションについて、日本人英語学習者・日本人以外の非英語母語話者・英語母語話者の3グループに対して行った聴き取り実験で、どの程度の容認度があるのかを報告する。また、EILの観点から英語発話に必要なイントネーションとは何か、発音指導での留意点、および容認性に対する判断に影響を及ぼす可能性のある項目についてのアンケート調査結果も報告する。