更新日:2022/10/06

第19回 英語教育総合学会


日時:2022116日(日)13301630
場所:Zoom開催。Google Forms https://forms.gle/dQ4BzMSC2bhQzk5Y6

にアクセスのうえ1020日までに参加申込をお願いいたします。

(英語教育総合学会ホームページ(「概要」と共に)にも掲載)

1031日頃までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。


シンポジウム
コロナ禍におけるオンライン英語授業の工夫

現場からの報告 13:30-15:20

はじめに コメンテーター:成田一(大阪大学)

1 大学におけるハイブリッド授業の取り組み 辻岡宏子明治大学

2 オンライン授業による英文解釈授業の一考察  森田真大阪電気通信大学

3 COVID-19に関連させたオンライン授業内におけるCLILとしての工夫 山西敏博長野大学

4 GIGAスクールにおけるデジタルポートフォリオの実践 今西竜也京都教育大学附属京都小中学校

5 Zoom、ロイロノート・スクールを使ったコロナ禍における英語授業 植松知奈美関西学院初等部

6 Zoom+複数のアプリによる遠隔授業-教室での授業に近づけた遠隔授業の試み- 仲田陽子大阪大学

7 Zoomによる大学英語授業-その効果を探る 梅咲敦子関西学院大学



招待講演 15:25-15:55

私の推しはオンデマンド授業です! 靜哲人大東文化大学


全体討論 16:00-16:30



参加費 英語教育総合学会 会員・非会員共に無料、どなたでも参加可能。
連絡/問い合わせ 事務局 orchid-e [AT] kcc.zaq.ne.jp (メール送信の際は [AT] を @ に変更してください)

概要

現場からの報告

辻岡COVID-19の感染拡大に伴い、従来の対面授業からオンライン授業に移行をする大学が増え、教育の現場では様々な試みがなされてきた。発表者の所属大学では、今年度から対面授業を基本としているが、すべてオンデマンドの授業や、Zoom、オンデマンド、対面授業を併用したハイブリッドの授業も展開している。この発表では、発表者の担当した授業に基づいて、英語の授業をハイブリッドで実施することに関し得られた知見を整理、共有していきたい。具体的には、使用教科書、アイスブレーカーとしてのオンラインゲーム、課題や成績の管理、評価方法、学生の様子、さらにハイブリッド授業のメリットやデメリットについて述べたい。

森田昨年度、大阪電気通信大学でリーディングの授業をMeetで担当。次の3点の工夫をした。(1)パワーポイントを駆使し、名詞を緑色、動詞を黄色、形容詞と副詞を空色、前置詞を鼠色にして、それぞれ下に逐語訳を貼り、名詞節は[     ]、副詞節は<  >、形容詞節は(   )で括ることを視覚的に徹底した。解説後はスラッシュリーディングによるリピートを徹底し英語の語順での理解を促した。(2)授業中に名簿を見ながらランダムに指名しチェックを入れることで平等に発言機会を設けた。翻訳ソフトに頼れないように単語の品詞や質問の意図など和訳以外の質問をした。(3)テストでは教科書は持ち込み可とし、学習した長文を使って問題はオリジナルで作成した。記述式で文中の表現を使った英作問題や個人の見解を尋ねる問題で50問出題し時間は25分とタイトなものにし、学生同士の意見交換を難しくさせた。

山西オンライン授業で独自に工夫したこと:CLIL(内容言語統合型学習)を専門の一つとして取り組んでいる発表者にとして、【COVID-19】にテーマを絞り、その内容と英語教育との統合を図るという工夫をした。具体的には、以下の3点である。(1)小池東京都知事が発した「東京都内で最多数のコロナ患者(当時)」を出した時の、英語による発表をYouTubeで流し、そこから発せられた専門用語(「陽性・陰性」「緊急事態宣言」「行動制限」など)を抽出したり、内容を聴き取ったりさせながら【現代社会に起こっている時事問題(ここではCOVID-19蔓延に関する東京都の対策)】に対して、英語による聴き取りと読解をさせる。(2)COVID-19】に関連する英語の曲(替え歌)を「基本編・中級編・上級編」として、各2曲ずつを取り上げる。そのうえで、それぞれの曲の原曲と替え歌の歌詞の内容を比較、吟味しながら、英詩にも関連する「韻・リズム」にも焦点を当てて、考えさせる。(3)それらを聴かせた後に、自身の印象を日本語・英語で記させる。その際に、それぞれの歌詞の背景を考えさせながら、持論を英語で記すという「発信型英語」表現を身につけさせる。

今西GIGAスクールの取り組みによって11台の端末と高速インターネット環境が整い、デジタルポートフォリオの実践に取り組んだ。従来の紙媒体におけるポートフォリオの特性に加え、画像、音声、動画を用いることができることと、ネットワークを使って学級・学年を超えて共有し互いにフィードバックを与え合うことを可能とした。特別な予算を用いず、操作の研修等も省くため、特化したアプリではなく一般的に多く使われているGoogle Workspace for Educationの機能を使ったデジタルポートフォリオの取り組みと生徒の変容を示す。

植松コロナ感染拡大により臨時休校・学年閉鎖・学級閉鎖が相次ぐ中、学習保障のため、まずYouTubeを使って授業動画配信を行った。続けるうちに学校側からの配信だけでは児童の理解度が把握できず、質問にも対応しにくいことが問題点として挙げられた。そこで、双方向授業を可能とするZoomを取り入れ、個々の児童の授業参加時の様子を確認したり教師とのやり取りを行ったりする授業に移行していった。さらに、課題配布や音読・文法学習に関する宿題等の提出に使えるロイロノート・スクールを併用した。1人1台のiPadを所有する私立小学校でのオンライン英語授業の効果と課題についての発表。

仲田新型コロナの感染拡大防止のため、20204月から20228月までZoomと複数のアプリを併用し英語の授業を行った。対面授業は中間試験時に許可がでた際に、学期中1回だけ行った。授業前に、LinePadletを利用し、授業内容や発表担当について連絡、LoiloNoteに資料投函した。授業ではZoomの画面共有で、ニュースやインタビュー画像を視聴し、iPadにもリンクさせLoiloNote上の学生の資料にApple Pencilで書き込みながら説明し、授業で学習した内容についてZoomBreakout Roomで学生同士が話し合いをした。授業後は、授業資料をLoiloNoteに投函、課題を一斉配布し、添削後、一括返却を行った。時間制限機能等がついたアプリ、Kahootを単語テストに、Bookwidgetsを学期末試験に利用した。発音指導やスピーチ課題は、LoiloNoteの録音・録画機能を活用した。また、学期の総仕上げに学習内容からテーマを学生達が選び、グループ・プレゼンテーションをZoomの中でパワーポイントやLoiloNoteを使用して発表を録画したものを、クラス全員で観た後、LoiloNoteのアンケートで集計し、改善点について意見交換した。ICTに不慣れな一教員であったが、Zoomの講習会を受講しながら、教室での授業とほぼ同じ学習内容(Reading, Listening, Writing, Speaking)を扱い、実施することができた。

梅咲英語リーディングの授業を対面からZoomに切り替えることで、最も効果的に行えたのは、パラグラフごとに何が書かれているかを素早く理解する練習である。つまり、様々なテキスト構成の理解であり、各筆者の主張や情報を的確にとらえる訓練であったと考えられる。従来から、教室では、オリジナルの論説文、インターネット掲載の報道記事、法律文、レシピ、論文要旨などを読み、コーパス利用法紹介や学生個人のリーディングの録音を行ってきた。まず、従来の教室授業をZoomに置き換えを考える際、日本語訳に授業時間の大半を割く授業からの脱却ができた。対面とZoomを対比しながら、Zoomによる授業の長所と短所を考察する。

招待講演

コロナ禍に見舞われて2年半あまり、我々は対面でなくともさまざまなことが可能であることを学んだ。本講演ではとくに「オンデマンド」授業の良い点を語りたい。いまやすべての授業でオンデマンドオプションを完備するべきである。時間も場所も選ばず、通信環境を気にすることもなく、そして教室に来なくても学べるオンデマンド授業を、オルターナティブとしてまたプラスアルファとして完備しておくことで、さまざまな種類の問題が解決される。即時のフィードバックはできなくとも毎週のフィードバックで十分に効果的だ。学生アンケートの結果をもとに望ましいオンデマンド教材の特性を論じ、また講演者の作成したオンデマンド動画の一部を紹介する。

更新日:2020/04/10

第18回英語教育総合学会報告

シンポジウム「日本の英語教育をどうするか―民間試験活用の誤謬―」

 文科省の英語民間試験活用の中止、国語と数学の記述試験の中止を受けて、第18回英語教育総合学会のシンポジウム「日本の英語教育をどうするか―民間試験活用の誤謬―」(注1)を1月25日に開催した。このシンポジウムで話され全体討論でも認識を共有された内容の報告をしたい。

 英語教育の転換にもつながる旬なテーマのシンポジウムに、大津由紀雄氏(慶應義塾大学名誉教授)、江利川春雄氏(和歌山大学教授)といった英語教育改革のリーダーを講師陣に招聘したことから関心が高くなったことが伺われるが、近畿圏や中京、四国、中国など従来参加者の多い広域圏だけでなく、札幌からの参加者もあった。

成田:4技能を測る民間試験の入試への活用によって中高の英語教育を変え、英語が話せるようにする政府の方針は、日英語の言語差を全く考慮しない愚策。
蔦田:知識偏重の試験からの脱却を目的に産出能力を選考基準とする概念は受容される一方で、民間試験は学生ファーストであり得るのか?
江利川:専門家不在・官邸主導の英語教育政策。英語民間試験導入など教育市場化による巨大利権構造。英語教育関係者は学理と実践に根ざす主張と行動を!
大津:新しい学習指導要領にその萌芽が明確に見られる、「ことば(language)」の視点からの言語教育こそが現在の混乱から教育を救う鍵である。

英語民間試験の成績活用の黒い背景
 講演の概要は上記の通りだが、英語民間試験の成績活用は、①経済格差に左右されるだけでなく、②それぞれの試験の目的が異なり相互の成績が対応できないほか、③アルバイトの学生にも採点を委ねる予定のため、採点の公平性にも強い疑念があったことから、全受験生に課すべきではない。しかも、これは④それぞれの民間試験に文科省幹部の天下りや政治家への献金や利権も絡んで導入されようとしたことが判明している。この件については、江利川講師が官邸主導の英語教育政策と英語民間試験導入など教育市場化による巨大利権構造を極めて明快に解説して、そこからの脱皮を強く訴えたのに参加者が感銘を受けた。「読み書き」と「聴き取り」は共通テストを利用するにしても、⑤「記述試験」や特に「話す試験」はそれぞれの大学・学部が時間をかけて行うのが、採点・評価の信頼性も担保できるということで、全体会議において認識の一致を見た。

「総合的な文法訳読」により文法語彙力を堅固に!
 それとともに、今後の英語教育の在り方についても議論が交わされた。グローバル化の時代には英語でコミュニケーションできることが重要であるとして、「文法訳読」を政財界や文科省が根拠なく否定してきた。しかし、英語でコミュニケーションをするには英語の基礎能力となる文法語彙力の育成が必要だ。まず(「激動する英語の発音の仕組み」の教育を踏まえた)音読も行う「総合的な文法訳読」により文法語彙力を堅固なものにし、それを踏まえて高い読解作文力を養成することが難関校の受験には欠かせないこと、さらに文法語彙力が、実務において重要なメールや文書などの「読み書き」だけでなく「聴く話す」ことにも大いに役立つことを成田講師が述べたが、全体討議でもその認識が共有できた。

自動翻訳・通訳の高度化とグローバル社会への導入
 さらに、自動翻訳・通訳が近年の人工知能の深層学習により急速に高度化し、学生が授業のテキストの英文の読解や英作文に(Google翻訳などの)アプリで自動翻訳を使用している実態を踏まえ、英語教育も自民党の教育再生実行会議が提案するような「目標を中高の教師でも達成困難な荒唐無稽なレベル(注2) 」にするのではなく、それぞれの学生が自らの習得希望に沿って選択する可能性についても成田講師から提案があり全体で討議した。

機械翻訳では愛を語れないか?
 ただ、会場の中学校の先生から「機械翻訳では愛を語れない」という旨の発言があったが、「よっぽど互いに細かい言葉のニュアンスにうるさいカップル以外は片言の英語で(目と目で)会話できますし、実際共通のコミュニケーション言語を持たずに国際結婚したカップルをたくさん知っています」という私信を北海道情報大学の先生から頂いた。その通りで、愛の交換はともかく、友人関係になるには、まともに言葉が通じない同士のやり取りより、通訳機で相互の言語でコミュニケーションできる方がお互いのことが良く分かる。スマホの普及もあり、言語の壁を破るコミュニケーションができる時代になったのだ。また、江利川講師から代名詞の翻訳について否定的な声もあったが、they/them/their(注3)以外の代名詞はそのまま訳されれば通常は問題ない。もちろん、日英で主語や目的語が欠落しているときに誤訳はするが、それは日本語の欠落部を補って翻訳すれば良いことだ。阪大の理工系の研究室でも使っているし、英語が苦手な学生や先生よりどうにか理解可能な翻訳になる。
 通訳機や翻訳・通訳アプリは、市役所の窓口、鉄道の駅、空港などの公共施設、大病院やレストラン、ファーストフード、百貨店、家電店、大型回転すし店など、いろいろな職場(3000企業以上)で多言語通訳機がどんどん導入されてきている。

司法通訳にも多言語通訳機を!
 司法通訳の場でも、今後、多言語通訳機の導入は必須だ。全国の地裁・簡裁で外国人が被告となり、通訳がついた事件は2018年に3757件で、5年前の1.6倍に増えた。通訳言語は38言語にも及ぶ。法廷の通訳は難解な法律用語を訳すなど、専門性が要求される(注4)が、現在は書類審査と裁判官による面接で適性を判断している。通信技術の活用も重要だ。ある地裁では別の裁判所にいる通訳が映像と音声をつなぐビデオリンク方式で法廷内のやり取りを通訳する。法務省も、検察での外国人の取り調べにテレビ会議を使った通訳の仕組みを導入し、取調室と通訳のいる別の検察施設を結ぶ。
今のところ、司法の場での通訳機の導入は予定されていないが、38言語以上の通訳を確保するのは現実には難しいし、通訳のレベルにばらつきがある。過去には、公判での誤訳が問題となったケースがあった。実用レベルにある多言語通訳機(ポケトーク(55言語通訳+19テキスト翻訳19,800円:2017年12月発売)などを導入し、通訳機の訳と比較して違うようであれば、裁判官や検察官が通訳者に通訳の精度の確認を求めるなどにより、適正な操作と公判審理の実現を期すことが求められる。

多言語での情報通知
 今回のコロナ・ウィルスのように国民に情報を周知しなければならない事態においては、日本に住む外国人への情報を従来の英語、中国語、韓国語だけではなく38以上の言語で発信することが望ましいが、それには多言語通訳機やアプリの活用が欠かせない。ただし、自動翻訳の結果が「意味が分かるかどうか」の確認は、翻訳者でなくとも、せめて母語話者に確認する必要はある。たとえば、(以前は、職員らが英訳したが、情報更新が遅れがちなので、)2018年7月に自動翻訳を導入した厚生労働省のホームページに掲載された「新型コロナ・ウィルス感染症について」という特設ページでは、情報が随時更新され、画面の<言語切り替え>から英語、中国語、韓国語を選択できるが、外国語への誤訳例には、「手洗いなどの実施」が韓国語では「トイレなどの実施」、英語では「トイレでの実施」(implementation in the restroom)となっており、「そのうちの2つは」が中国語では「何日か過ぎている2つは」となっており、意味が通じない。より高度な自動翻訳の導入が急務だ。

全ての学生が「英語を話せなければならない」のか
 このように、自動翻訳や通訳機、翻訳・通訳アプリの高度化と普及で、グローバル化を理由に「英語を話せる」教育を全ての学生に受けさせる必要がない状況になりつつある。特に、日本語との言語差が極めて大きい英語は、授業はむろん塾や家庭でも学んでも習得できる学生が限られている。英語に費やす膨大な時間をほかの学習に費やした方が有益なのではないか、また、平均で5.5時間もスマホに費やす女子高校生は、英語習得どころかどの授業の予習復習もしていない実態についても憂慮された。

紙の辞書か電子辞書か
 なお、「紙の辞書と電子辞書/アプリ のどちらを使うのが語彙習得に良いのか」ということも質問が出たが、携帯と語彙を引くのが容易で音声も聴けるという点では電子辞書/アプリ(注5)が便利だが、学習段階では、色んな情報を用例を含めページ全体を見てじっくり調べられ、マーカーで記すなどの作業を行うことで記憶にも定着しやすいため、紙の辞書で勉強するのが良いということで講演者一同が一致した。

言語獲得期には誰でもネイティブに
 米国での移民の言語習得の調査結果からすると、(WH移動など)日本語にはない文法操作の瞬時処理能力の獲得については、言語獲得期の7,8歳までに習得する必要がある。最近のTV番組で「天才少女が英検2級合格」とか「天才兄弟が大阪城で英語ボランティア」が紹介されていたが、言語獲得期の幼少期に児童英語放送やDVDを毎日見るなど適切なインプットさえ与えられれば、誰でもかなり英語が話せるようになる。言語習得期にはどの子も外国語習得の天才になるのだ。実際、ネイティブの先生の授業を受ける英語保育園(注6)や私大初等科の児童はネイティブに準じる英語力を習得する。一方、文科省の方針のように、小学3,4年でのお遊びの外国語(英語)活動や5,6年での英語教科化では、そうした言語獲得期のメリットは享受できない。

注1:シンポジウムの講師と演題は、コーディネーター:「民間試験を課せば英語が話せるのか―言語差と脳内処理が壁―」成田一(大阪大学名誉教授)、「英語教育と民間試験の「借用」」蔦田和美(関西外国語大学)、「官邸主導の英語教育政策を問い直す」江利川春雄(和歌山大学)、特別講演「今こそ、「ことば」の教育を!」大津由紀雄(慶應義塾大学名誉教授)
注2:「成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言」(2013年)では、「大学において、従来の入試を見直し、実用的な英語力を測るTOEFL等の一定の成績を受験資格および卒業要件とする」とし、国公立トップ30校の卒業要件をiBT 90点にすることを提言。これは英語教師でもクリアするのが難しい。文科省が英語教師に求めるiBT 80点(英検準1級)に達するのは、中学で28%、高校で53%に留まる。
注3:they/them/theirは、「彼ら(が/を/の)」と訳されるが、「彼女/それら(が/を/の)」などのこともあり、現段階では改善が迫られる。
注4:米国やオーストラリアには法廷通訳の資格制度があり、ランク別の報酬規程を定めた米国の州もある。日本弁護士連合会では13年同様の精度の創設を提言。19年からは東京外国語大と青山学院大が連携して「司法通訳」養成講座が開講。通訳技法に加えて、法律や裁判の仕組みを教え修了者には終了証を交付。
注5:『グーグルレンズ』という無料アプリは、英文に向けるだけで日本語に翻訳する。
注6:その卒園児を受け入れる児童英語スクールもある。

更新日:2020/01/03

第18回 英語教育総合学会

日時:1月25日(土)13:00-17:00
場所:四天王寺大学 6号館6B-253教室(会場情報は下記)


シンポジウム
日本の英語教育をどうするか
―民間試験活用の誤謬―


「民間試験を課せば英語が話せるのか ―言語差と脳内処理が壁―」
                  成田一(大阪大学名誉教授)

「英語教育と民間試験の「借用」   蔦田和美(関西外国語大学)

「官邸主導の英語教育政策を問い直す」 江利川春雄(和歌山大学)

特別講演 「今こそ、「ことば」の教育を!」
              大津由紀雄(慶應義塾大学名誉教授)

              全体討論


参加費:1000円、どなたでも参加可能。
連絡/問い合わせ 事務局 orchid-e [AT] kcc.zaq.ne.jp (メール送信の際は [AT] を @ に変更してください)

講演概要

成田:「グローバリゼーションの時代に『日本人が英語を話せる』英語教育をするように」という企業の意向を政治家が受け、それに沿うべく文科省がコミュニケーション英語に舵を切った1990年前後以降、英会話力がさほど向上してこなかった。英語民間試験の成績活用というのは、その状況で、中高や予備校の英語教育を「話す」ことにベクトルを向けさせる目論見で推進されたものだ。「日本人が英語を話せない」のは「極端な言語差」と(文法操作の瞬間的な)「脳内処理」が壁となるためだ。言語獲得期ならば越えられるが、それ以降は、文法基盤を固め繰り返し練習ないと運用ができない。いきなりコミュニケーションというのは、言語習得の仕組みを理解していない愚かな暴挙だ。

蔦田:一般的に英語試験の概要は、平常時の学習内容に与える波及効果は大きい。従って、これまでの共通一次試験におけるマークシート式試験は学生を知識偏重の学習に導く傾向が強いと考えられる。その意味で「話す」「書く」力を選考基準とすることは教育にとって一つの前進といえる。しかしその一方で、物理的な非合理性から民間会社に委ねることを解決策としたことは間違いであったという事実は否めない。見送りとなった案は、民間試験の「活用」ではなく「借用」と言える。今後さらなる検討がすすむ中、民間試験借用の問題点を明らかにし、今後のより良い英語学習環境の構築を目的に、目標とするにふさわしい入学試験の在り方を考えたい。

江利川:まっとうな専門家不在のまま官邸主導で下ろされる英語教育政策。背後にあるのは、①素人財界人・政治家の思い込みと、御用学者の下支え、②内閣人事局による官僚支配、③英語民間試験導入・「高校生のための学びの基礎診断」など教育市場化による巨大利権構造、④格差と選別の新自由主義。これらの危険性は民間試験・記述式導入延期問題で明らかになりつつある。攻勢に転じよう。  いまや英語教育は政治問題。広汎な市民との連携による政策転換が必要だ。そのために、学理と実践に根ざした反論、発信、行動を。多忙化で追いつめられた教員の「沈黙」こそが、官邸を暴走させる。声を上げよう。逃走から闘争へ!

大津:母語教育としての「国語」教育と外国語教育としての英語教育が揺れている。人間だけに与えられた宝物としてのことば(language)の本質を理解し、その力を縦横に発揮させるための言語教育という考えの欠如が現在の混乱のもとにある。新しい学習指導要領にその萌芽が明確に見られる、「ことば」という視点からの言語教育こそが現在の混乱から教育を救う鍵であることをできるだけ平明に具体例を交えながら語るつもりである。

会場情報:
四天王寺大学  大阪府羽曳野市学園前3丁目2-1
        TEL:072-956-3181(代表)

公共交通機関:近鉄南大阪線『藤井寺駅』、『古市駅』 から近鉄バス「四天王寺大学行き」終点下車(所要時間約20分)バスの時刻表を添付。
無料駐車場あり。
アクセス情報:http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/guide/access.html
キャンパスマップ:http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/campusmap/f6.php

バスの時刻表:
藤井寺駅前 発 四天王寺大学行き(駅側乗り場)11時53分、12時13分、12時43分、12時53分。
藤井寺駅前 発 四天王寺大学行き(銀行側乗り場)11時53分、12時13分、12時43分。
古市駅前 発 四天王寺大学行き 12時3分、12時26分、12時33分。

藤井寺駅からバスやタクシーに乗る場合は、駅の南出口をご利用ください。