更新日:2013/05/28

英語教育総合学会の皆様へのお願い

7月もしくは8月に開催予定のシンポジウムにおいては、(下記のような)最近の英語教育行政の動向の中で、「英語で授業」が実施されて以降の学校の現場での状況を高校の先生方に15分ほどご報告いただきたいと存じます。6月12日頃までにご意向を連絡いただけないでしょうか。また、自民党の教育再生実行本部長の「高校卒業レベルは英検2級、TOEFL45点ぐらいなので、それを目指す」とし、さらに「まずは、センター試験から英語をやめ、TOEFL一本にする」という提案(朝日新聞「争論―大学入試にTOEFL―」(2013年4月8日))についても問題点を討議したいと存じます。
会長 成田一(大阪大学名誉教授)

★★★★

「英語が使える日本人の育成」を掲げ、「コミュニケーション英語」への転換を図ってきた文科省が、(教職課程で音声学を必修にしていないなど、)発音教育を疎かにしたままで、中央教育審議会の外国語専門委員会の審議も経ないで、「英語の授業は英語で行なう」という指針を示した。「コミュニケーション英語」への転換と「ゆとり教育」によって顕著に英語力が低下したが、「ゆとり」からの脱却後まもなく、成果がまだ何も出てない中で、25年度4月より公立高校では、「英語で授業」の方針が実施されたばかりで、学校によっては授業の崩壊も危惧される状況だ。それなのに、自民党の教育再生実行本部の「成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言」(2013年4月8日)では、「大学において、従来の入試を見直し、実用的な英語力を測るTOEFL等の一定の成績を受験資格および卒業要件とする」とし、国公立トップ30校の卒業要件をiBT 90点にすることを提言している。文科省の設置した「外国語能力の向上に関する検討会」がまとめた指針(2012年6月)では、高校生が卒業時に英検準2級から2級となっているが、現実には高校3年生で英検準2級以上が約36%に留まる。ちなみに、教師に求められた英検準一級、TOEFL550点(iBT 80点)の指針に達しているのは、中学で28%、高校で53%に留まる。自民党案は一般大学生の卒業要件をiBT 90点にするというのだから、英語教師よりもかなり高い基準を設定しているのだ。正に、政治によって荒唐無稽な教育目標が設定され、英語教育が崩壊の危機に晒されている。

更新日:2013/02/09

成田教授 講演会


退職記念最終講義
日時:2月14日(木)16時―17時
場所:大阪大学大学院言語文化研究科 新棟2階大会議室

『日本人に相応しい英語教育』 成田一教授
参加費:無料、誰でも参加できます。



OBK講演会
第6回 OBK児童英語講師自己研鑽の会
場所:弁天町市民学習センター 第1研修室
日時:2013年3月31日10:00~16:30

講演:『外国語として学んだ英語でも半自動化できる』
講師:成田一(大阪大学大学院教授)


講演後、参加者との質疑応答、実践に向けての討議(午後)
定員:50名(先着順)
参加資格:英語教育に関心のある方はどなたでもお越しください。

参加費:4,000円、(講演後自由参加の)懇親会費:4,000円
申し込み、問い合わせ:「こくちーず」より
http://kokucheese.com/event/index/71056/

更新日:2013/02/04

第5回 英語教育総合学会

第17回言語教育談話会との共同開催

日時:3月10日(日)13:00-17:00
場所:大阪大学 大学院 言語文化研究科 A棟 2F 大会議室(豊中キャンパス)

特別講演
言葉の感性を高める語法の世界
― 微妙な意味の違いを見極める―
八木克正(関西学院大学)

シンポジウム
「習得が容易な言語と難しい言語」
―教授技法は言語によって違う―

コメンテータ:江利川春雄(和歌山大学)

ミニマルな文法ですぐに話せる
―新たな基礎日本語教育の内容と方法―
西口光一(大阪大学)

なぜ英語の習得は難しいのか
―厳しい構造制約と激しい音声変容―
成田一(大阪大学)

参加費:無料
一般の方の参加歓迎。直接会場にお越し下さい。
問い合わせ:大阪大学 成田研 narita@lang.osaka-u.ac.jp

シンポジウムの理念

日本の英語教育では、コミュニケーション偏重の中、文法教育が軽視され英語力が低下したまま、高校で「英語での授業」が始まる。シンポジウムでは、なぜ日本語教育ではコミュ二カティブな教育に早い段階で移行でき、英語教育ではできないかについて、日本語と英語の言語差だけでなく、文法的な仕組みの違いを取り上げて、同じ言語対でも学習困難度は違い、教育方法も違うべきことを明らかにしたい。

シンポジウム概要

八木講師:「語法」という用語はいろいろな人がいろいろな研究を指して使われる。現象を観察することだけのものから、言語学的手法(認知文法であれ、生成文法であれ、その他どんな立場であれ)を用いてなぜそうなのか、そうでないのか、を明らかにしようとするものまで幅は広い。ここでは私の独自の研究方法とその成果を用いて、英語をより深く理解するためにいかに役に立つかを語ってみようと思う。

西口講師:膠着語の一つである日本語は、欧米の言語に比べて文を作る際の決まり事が非常に限られており、既に共有している事柄は省略されるのが通常である。故に、一定の注意を払えば初習者でも「文法的に不正確でない発話」を行うことが容易である。本発表では、そのような日本語の性質を生かした基礎日本語教育のカリキュラムと教材を紹介し、そこでの学習と学習指導の原理について論じる。

成田講師:日本人にとって英語の習得が難しいのは言語差だけではない。現に日本語は漢字を除けば欧米人にとってもそんなに難しくはない。英語は発音が激変し厳しい構造制約があるだけでなく、日本語にはない(数の一致やWH移動など)「瞬時の計算処理」の必要な操作があり、発話時の過重な負担となる。文法を定着させ半自動化することが、コミュニケーションの条件になることを明らかにしたい。