更新日:2009/11/03

第十回 英語教育総合研究会

JACET

日時:11月22日(日)13:00−17:00
場所:大阪大学大学院 言語文化研究科 新棟大会議室(豊中キャンパス)

 
シンポジウム
「英語運用力を伸ばす方略」
—英語で授業する前に実践すべきこと—
 

コーディネーター・司会 — 成田一(大阪大)
「「英語で授業」で壊れる英語教育—小中・高大の役割分担—」
「言語運用の基盤があってのコミュニケーション」成田一
「英語運用自動化の理論—言語処理における音韻処理—」門田修平(関学大)
「音読とシャドーイングの効果的な指導のための留意点と技法」鈴木寿一(京都外大)
「シャドーイング、リピーティング、音読の効果と相違」森庸子(同志社大)
質疑応答&全体討論「コミュニケーションの幻想」

参加費:300円(飲料等提供) 参加資格:なし、一般の方の参加自由。研究会年会費:無料。
問い合わせ:大阪大学 成田研 narita@lang.osaka-u.ac.jp
懇親会 場所:言語文化研究科旧棟大会議室 費用:教員1000円、院生800円

講演概要

「「英語で授業」で壊れる英語教育—小中・高大の役割分担—」 日本の高校生と教師の英語運用力の実態からすると、「英語の授業は英語で」という文科省の指針は、ゆとり教育において学習時間数を削減し、大衆に迎合して無批判にコミュニケーションに傾倒したことから、一貫して低下してきた生徒の英語力の更なる低下を招きかねない。本シンポジウムでは、文法・読解・発音などの基盤能力を運用力につなぐ方策として、理論と実効的な実践技術について考えたい。

「言語運用の基盤があってのコミュニケーション」 日本の近年の英語教育においては、文法教育を軽んじてきた。このことで英語の基盤能力が身につかなくなったが、発音もまともに教育してこなかった。このため 「運用のインタフェース」が欠落し運用能力も身につかなかった。講演では、現代の言語学の知見を踏まえた納得のいく文法教育と、調音と音韻変化のメカニズ ムの教育を踏まえた発音・聴解訓練が コミュニケーション能力の土台となることを論じたい。

「英語運用自動化の理論—言語処理における音韻処理—」 わが国の英語教育では、難度のきわめて高い素材をもとに、最小限のインプットしか与えない指導を展開してきた。これに対し、"fluency"の獲得という観点から新たなチャレンジをしているのが、多読・多聴と、シャドーイング・音読によるアプローチである。講演では、自動化の達成を目指すこのようなトレーニングの意義について検討したい。

「音読とシャドーイングの効果的な指導のための留意点と技法」 大学でも音読やシャドーイングの指導がよく行われるようになってきた。しかし、授業内での位置づけや技法そのものが不適切であったり、優れた技法が用いられていてもその順序が不適切な場合が意外に多い。 講演では、音読とシャドーイングの指導を効果的に行うための留意点と技法について論じたい。

「シャドーイング、リピーティング、音読の効果と相違」 講演では、シャドーイングと音読を組み合わせた発話演習の効果のほか、(シャドーイングとリピーティングの比較実験の結果から、)シャドーイング、リピーティング、音読の効果と相互の違いについて報告する。特にシャドーイングによりリズムとイントネーションがどのように改善されたかを、音声分析の結果を基に紹介したい。

プロフィール

成田一 大阪大学大学院言語文化研究科教授。日英語構造、機械翻訳、英語教育を研究。英語教育総合研究会代表。著書:『パソコン翻訳の世界』(講談社)、共著:『名詞』(研究社)、『日本語の名詞修飾表現』(くろしお出版)、『私のおすすめパソコンソフト』(岩波書店)、編著:『こうすれば使える機械翻訳』(バベルプレス)、『英語リフレッシュ講座』(大阪大学出版)

門田修平 関西学院大学法学部・大学院言語コミュニケーション文化研究科教授。博士(応用言語学)。専門は、心理言語学、応用言語学。主な著書:『英語リーディングの認知メカニズム』(くろしお:共編著)、『第二言語理解の認知メカニズム』(くろしお:単著)、『シャドーイングと音読の科学』(コスモピア:単著)他。

鈴木寿一 京都外国語大学教授。公私立の高校4校で26年間、本当に生徒のためになる英語授業を実証的に追求。1998年京都教育大学助教授、2001年同教授、2005年より現職。関西英語教育学会評議員、より良い英語教育を考える会代表。主な共編著:『より良い英語授業を目指して』(大修館書店)、高校用検定教科書MAINSTREAMNEW STREAMシリーズ(増進堂)他。

森 庸子 同志社大学・関西大学非常勤講師。日本語と英語のリズム・イントネーションの比較研究から、近年は、日本人英語学習者の英語における日本語音声の干渉を研究。主な論文:"Lengthening of Japanese monomoraic nouns" 2002年 Journal of Phonetics; "The initial high pitch in English sentences produced by Japanese speakers" 2005年 English Linguistics.