更新日:2006/05/01

英語教育総合研究会の設立趣意書

Integrated English Education Colloquium

日本の英語教育は、近年実践英語に傾倒する傾向が顕著だが、これは必ずしも望ましいことではない。確かに従来の文法・訳読を主体とする英語教育が「聞き・ 話す」といった実用面で学生や親、社会・企業の要望に応えるような成果を上げてきたとは言えない。しかし、これは音声面での教育がこれまでまともに行われ てこなかったことの必然的な結果であり、従来の英語教育を全て否定する根拠にはならない。

英語とは極めて異質な日本語を母語とする学習者が対象となる日本の英語教育において、従来の学校教育への反動のように文法・訳読を否定すると、英語力の中 核能力を否定することになる。言語獲得期を生かして言語差の壁を越えるという意図もあって、小学校でも英語教育を導入したが、成果を上げる国々と較べ、教 師の能力や時間、教材、内容全てにおいて全く不適切・不十分な現状では、英語教育の切り札にはなりそうもない。英語教育について社会や学習者に誤った思い 込みや認識があるとすれば、是正していかなくてはならない。これはカリキュラムの策定や効果的な授業の運営においても重要なことである。英語と同質な欧米 諸言語における研究や授業方法・理論に追従するような対応にも批判的な目が必要だ。

英語運用の基礎・根幹となる能力を養い、実践力を育てていくにはどうするべきか、ということについては、極めて多くの関連領域[言語教育・計画、言語学 (対照・理論・認知・心理・社会・コーパスほか、談話・会話分析など)、脳機能イメージング、文学・文化論、翻訳・通訳論&技術、機械翻訳ほか]の最新の 知見をも総動員することが可能な状況になっている。JACETには既存の多くの研究会があるが、いずれも比較的専門化された領域に絞って英語教育を考えて きた嫌いがある。専門領域の研究に留まらず、その成果を有機的につなぎ、さらに関連領域の知見を踏まえて、英語教育を総合科学的な視点から捉え直すことが 現代的な課題となっている。

そうした学際的で総合的な研究領域として英語教育を捉え、言語計画、授業デザイン、授業素材・内容、教育理論・方法、運用技能養成など、英語教育全般に 亘って、研究・提言する目的で「英語教育総合研究会」を設立し、講演、発表、テーマ討議などの研究活動を運営するとともに、その成果をJACET大会にお ける発表ならびに出版を行う。これにより、会員の英語教育を巡る諸問題に関する知見・認識を深め、さらに、望ましい英語教育の在り方・授業運営を小、中、 高校ならびに大学教師、学習者、一般にも提示し啓発するものとする。


運営方法

  • (夏季・春季休暇を除く校務などが繁忙ではない時期に)半期に1回程度(4月下旬-7月中旬;10月-12月上旬)を目安に研究会を開く。(関連学会の開催日を避け、)原則として土曜ないし日曜日13:00-17:30(時間は延長あり)に開催する。

  • 代表ならびに幹事を置く

  • (JACETの諸研究会など)英語教育諸分野ほか関連領域の研究者を講師として招き、研究成果を報告していただく。

  • 講演(プロフィール200字、概要400-600字をつけ案内):約40-45分の講演と15-20分の質疑応答を行う。

  • トピック討議:(メールないしその場で発題、)メンバーは英語教育に関わる問題を中心に意見交換をしたいテーマを気軽に提起・説明し、それについて自由な討論を行う。約60-80分