更新日:2026/08/11

第25回 英語教育総合学会

日時:2026829(土曜日)1330分から1700

場所:オンライン開催

シンポジウム『AI活用時代の土台となる英語教育の多面的評価』

コーディネーター&コメンテーター:成田一(大阪大学)

特別講演「『小学校英語評価入門』-科研12年間のまとめと成果」泉惠美子(関西学院大学)

1340分~1430分)

「外国語の「見方・考え方」を反映したCan-Do評価―CEFRの理念や仲介能力から得られる示唆」長沼君主(青山学院大学)

1430分~1510分)

CEFRの理念と発達認知の観点からみたリタラシーの指導と評価ー小・中の接続から」アレン玉井光江(青山学院大学)

1510分~1550分)

小学校外国語教育におけるICTAI翻訳・生成AI含む)活用の可能性成田潤也厚木市立鳶尾小学校)

15551630分)

パネル討論:全体討論

1630分~1700分)

 

参加費:無料、参加申し込み期限825日:学会HP参照。

問い合わせ先:事務局orchid-e@kcc.zag.ne.jp

https://forms.gle/vw9Yh87MEX19WAfZA

にアクセスのうえ、825日までに参加申込をお願いいたします。827日までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。


シンポジウム『AI活用時代の土台となる英語教育の多面的評価』要旨

特別講演「『小学校英語評価入門』-15年間の研究のまとめと成果」泉惠美子

 

2020年度、小学校高学年で外国語科が教科化され、中学年でも外国語活動が必修化された。以降、検定教科書の改訂、デジタル教科書の導入、一人一台端末の整備など、英語教育は大きな変革期を迎え、指導と評価の一体化が一層求められている。

こうした中、小学校英語評価研究会(EASEL)は、小学校英語教育学会の課題研究およびJSPS科研費(基盤研究B)による15年間の研究・実践の集大成の一つとして、7月に『小学校英語評価入門』(大修館書店)を刊行した。

本講演では、英語教育が大きく変化する中で、小学校英語の学習評価がどのように変遷し、現在何が求められているのかを、Can-Do、パフォーマンス評価、eポートフォリオ等を通して概説する。さらに、児童の有能感、自己効力感、自己調整能力、言語能力と情報活用能力の育成につながる具体的な実践を紹介する。本書が、小中連携を含む今後の英語教育における指導と評価の充実に寄与することを願っている。

 

CEFRの理念と発達認知の観点からみたリタラシーの指導と評価―小・中の接続から」アレン玉井光江


小学校英語と中学校英語の接続を考える際、「読むこと」「書くこと」の指導と評価は重要な課題となる。本講演では、小・中学校の学習指導要領と、それらが参照するCEFRCommon European Framework of Reference)に示された「読むこと」「書くこと」の目標を確認するとともに、発達理論からみた両技能の習得過程を概観する。その比較を通して、現場で求められる指導と評価の在り方を考察し、当研究会で開発を進めている「読むこと」「書くこと」のCan-Do尺度評価を紹介する。「~ができる」という行動中心の評価が主流となる中、初期段階では知識・技能の指導と評価も不可欠である。さらに、児童・生徒は自らの能力を適切に評価できるのかについて、実証研究を紹介しながら検討する。

 

「外国語の「見方・考え方」を反映したCan-Do評価―CEFRの理念や仲介能力から得られる示唆」長沼君主

 

次期学習指導要領に向けた議論の中で、AI時代における外国語教育の意義を踏まえた「見方・考え方」は、指導や学習、評価の指針としてさらに重要性を増している。本講演では、3つの資質・能力を1つに束ねた能力記述として、Can-Do形式で学習到達目標を設定する上で、いかに「見方・考え方」を反映し、「本質的な問い」から逆向きにカリキュラムや評価を設計するかを考える。その際に、Can-Do評価を考える上で大元となるCEFRにおける行動指向主義や社会的行為者、複言語複文化主義などの理念と、現行の学習指導要領やその改訂で目指す方向性を整理し、CEFR/CVで導入された仲介能力のCan-Do尺度についても触れながら、今後の外国語教育を考える上で得られる示唆について議論する。

 

「小学校外国語教育におけるICTAI翻訳・生成AI含む)活用の可能性」成田潤也

 

 生成AI等の技術進化は、外国語教育に対し「なぜ学ぶのか」という根本的な問いを突きつけている。本講演では、AI翻訳やバイブコーディングを活用した自作アプリの活用に焦点を当てた授業実践を紹介する。これらは学習者が抱える言語的・心理的な表現障壁を低減し、学習体験をより充実させる鍵となり得る。テクノロジーを単なる効率化の手段ではなく、対面での人間同士の対話を豊かにしたり、自立的な学習を下支えしたりするツールとして捉え直すことで、教室の学びはどう変容するのか。AIが高度な言語生成を代替し得る現代において、外国語教育が持つ「不変の価値」とICTはいかに共存可能なのか。AI時代に外国語教育が向き合うべき課題に対し、現場の視座から議論の種を提示したい。

更新日:2025/12/10

第24回 英語教育総合学会

日時:131日(土曜日)1330分から1630

場所:オンライン開催

シンポジウム『英語教育ー時代を超えて』

コーディネーター&パネラー:成田一(大阪大学)、蔦田和美(関西外国語大学)

特別講演『非母語英語の時代における「国際英語」教育』日野信行(大阪大学:追手門学院大学)
1340分~1430分)

AI時代の英語エッセイ指導:スピーキングを取り入れたレベル調整の試み』小田登志子(東京経済大学)
1430分~1510分)

『立命館大学プロジェクト発信型英語プログラムにおけるAIの活用』後藤秀貴(立命館大学)
1510分~1550分)

休憩1550分~1555分)

パネル討論:全体討論15551630分)

 

参加費:無料、参加申し込み期限125日:学会HP参照。

問い合わせ先:事務局orchid-e@kcc.zag.ne.jp

https://forms.gle/vw9Yh87MEX19WAfZA

にアクセスのうえ、125日までに参加申込をお願いいたします。128日までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。なお、講演はYouTubeで配信予定。

 

シンポジウム『英語教育ー時代を超えて』要旨

特別講演『非母語英語の時代における「国際英語」教育』日野信行

英語が母語話者の枠組みを超える「国際英語」という現象は、日本では特に関心が強く、1970年代からすでに注目を集めている。また今日、インターネットでの言語使用をはじめとして非母語英語を含む多様な英語が身近な存在となり、この現実を反映する形で、学界においてもEIL, ELF, WE, GE等の視点から国際英語の研究は世界的にきわめて盛んである。この情勢の下では、国際英語の教育的側面についてある程度の知識を持つことは、今や英語教員に不可欠な素養の一部となりつつあると言えよう。本講演では、国際英語の教育に長年取り組んできた者として、理論と実践の両面から、「国際英語」教育の重要なポイントを提示したいと思う。国際英語による多文化共生の理念から、国際英語の教材・教授法・モデルの態様、実際の授業実践、さらに「国際日本語」の可能性やAIの影響等についても言及したい。

AI時代の英語エッセイ指導:スピーキングを取り入れたレベル調整の試み』小田登志子

学生が英語エッセイを作成する際に、AIが出した難しい英語表現を利用し、自分自身が内容を十分に理解していないことがある。これは望ましい姿ではない。水本(2025)が提唱するように、AIの力を借りてもよいのは、学習者自身が読んで理解できる範囲(Receptive Competence)の英語である。学生にAIの利用を許可しつつ、自身の習熟度にふさわしい英語を取捨選択させるにはどうすべきか。本発表では、スピーキングを取り入れた英語のレベル調整の試みについて報告する。学生に英語エッセイを課す際、AIの使用を許可しつつ、エッセイを音読した録音の提出、授業内でエッセイの内容を確認する質問への口頭回答を求めた。すると学生は上手に読めない英語や質疑応答で困るような内容を避けるようになった。さらに、質問役をAIに委ねると、質問が豊富になり、対話の臨場感が増した。発表では、質問役をAIに委ねる際のコツや対話に教員が介入すべき場合についても考察する。

『立命館大学プロジェクト発信型英語プログラムにおけるAIの活用』後藤秀貴

本発表では、立命館大学プロジェクト発信型英語プログラム(PEP)におけるAI活用について、「プログラムとしての取り組み」と「教員個人の実践」という二つの観点から報告する。PEPでは、全受講生が利用できる機械翻訳サービスの提供やAI活用ガイドラインの作成・運用に加え、教員同士がAIに関する情報や意見を気軽に共有できる環境づくりを進めている。一方で、各教員はこうしたプログラム全体の枠組みを踏まえつつ、担当クラスで自身の裁量によりAIを活用した指導実践を行っている。本発表では、共通英語科目におけるAI活用の組織的な取り組みが、教員個人の実践とどのように相補的に機能しているのかを検討する。急速に発展し続けるAIを教育で活用していくにあたり、個々の教員の創意工夫を尊重しながら、組織(プログラム)としての教育の公平性・一貫性をどのように維持・担保していけるのかを、参加者とともに考えるきっかけとしたい。

更新日:2025/06/15

第23回 英語教育総合学会

日時:7月21日(月)1330分~1720

場所:オンラインで開催

シンポジウム『AI活用は基盤が在ってこそ!』

基調講演:成田一(大阪大学)(13:30~)

特別講演「社会脳インタラクション能力とは何か?」門田修平(関西学院大学)(14:00~)

「大学英語教育における生成AI活用に必要な英語力」吉田信介(関西大学)(14:40~)

(休憩15:2015:30)

AIに使われない英語使用のためには何が必要か」金丸敏幸(京都大学)(15:30~)

「生成AIと共存する英語教員に必要な力」伊計拓郎(帝塚山学院大学)(16:10~)

全体討論(16:5017:20)

 

参加費:無料、参加申し込み期限7月17日:学会HP参照。

問い合わせ先:事務局orchid-e@kcc.zag.ne.jp

https://forms.gle/M5HYxqXz18Qp781C8

にアクセスのうえ、7月17日までに参加申込をお願いいたします。720日までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。なお、講演はユーチューブで配信予定。


シンポジウム『AI活用は基盤が在ってこそ!』

基調講演:成田一(大阪大学名誉教授)

この数年で企業ではすっかり生成AIが実務に入り込み、大学や高校でも生成AIが取り入られているが、英語の授業に関してみると、作文などで学生には思いつかない英訳表現が提示される面では、AI翻訳が参考になることが多い。しかし、AI翻訳はいわば「ブラックボックス」の中で遂行され、日本語文をその英訳に訳出するアルゴリズムが示される訳ではないので、これにより学生が自らその英訳を生成する能力を獲得することはない。所定の日本語文を望ましい表現形式ないし文体で英訳するには、文法や文体論的な知識を学生が教師ないし書籍から学び、その知識を用いて英文を作成しなくてはならないのだ。

特別講演「社会脳インタラクション能力とは何か?」門田修平(関西学院大学名誉教授)

従来からのCCCommunicative Competence)に対して、対人的な社会的相互行為を遂行する能力をSBIC(社会脳インタラクション能力:Social Brain Interactional Competence)と呼ぶ(門田, 2023)。この能力を可能にする社会脳(SB)ネットワークについて、1) メンタライジング(mentalizing)と認知的共感、2) ミラーリング(mirroring)と情動的共感、3) 顔認識と視線(誘導)にもとづく共同注意(joint attention)の3つの観点から概観する。その上で、SBICを促進するインタラクティブ・プラクティスの実践例として、インタラクティブ・シャドーイング+要約の活動などについて、その方法について紹介したい。

「大学英語教育における生成AI活用に必要な英語力」吉田信介(関西大学名誉教授)

新学習指導要領の「エッセイライティング」では、「支援を活用しながら論理的に意見を述べる力」が求められている。アウトプット仮説(
Swain, 1993)では、ライティング中に表現の「穴」に気づくことが学習効果を高め、Mizumoto2023)では、生成AIが自律的な書き手の育成に貢献できるとしている。そこで、生成AI活用のライティング授業を実施した結果、AI活用には、1)具体的プロンプト、2)人間による検証、3)文体変換の適度な利用、4)校正機能による文法・語彙力強化、5)生成AIが英語力や発想を促す触媒となることが示された。一方、今後、多様な英語力の学生が生成AIを活用するにあたり、基盤となる英語力の設定が不可欠となってきている。本発表では、受講生のフィードバックを基に、1)CEFR 記述子と AI 推敲タスクの照合、2)メタ言語意識と誤りの理由の理解、3)語用論・文体調整タスクの3点から検討した結果、CEFR B1程度の英語力が必要であることが示唆された。また、翻訳ソフトを併用しても、誤訳検知や追加プロンプト作成などに、同程度の英語力が必須であると推察された。

AIに使われない英語使用のためには何が必要か

-語順を制する者がAI時代の英語を制する-」金丸敏幸(京都大学)

生成AI技術の普及により、外国語教育は根本的な見直しを迫られている。従来のコミュニケーション能力育成を目的とした教育では、手軽に高品質な翻訳が可能な現代において妥当性に疑問がある。本発表では、AI協働を前提とした新しい英語教育という観点から、「語順重視」のアプローチを強調する。英語の理解可能性(intelligibility)の条件は、主語・動詞の存在と語順の固定性に集約される。日本語話者にとって、格助詞に依存しない語順による意味理解は最大の課題である。新時代に必要な英語基礎能力として、構造認識能力、語順操作能力、AI協働型コミュニケーション技能を挙げ、段階的な導入と合わせて議論する。

「生成AIと共存する英語教員に必要な力」伊計拓郎(帝塚山学院大学)

生成AIが言語教育に与える影響は大きく、従来に比べて飛躍的に学習を促進する環境が整ったことは疑いようがないが、生成AIが英語教員の仕事を完全に代替するとは考えにくい。ただ、生成AIを効果的に活用するには一定の英語力が不可欠であるという点については多くの教育関係者の間で共通認識があるだろう。そこで本発表では、生成AI時代を生き抜くために英語教員に求められる力について、中高での実践経験を踏まえて、①英語力、②言語学的知識、③発問力の観点から考察する。具体的には、英語力向上を目指して取り組んできた和文英訳の実践例を紹介し、その中で得られた知見を共有する。さらに、生成AIは誤った情報をあたかも正しいかのように提示するハルシネーションを引き起こすことがあるが、言語学の知識によりそれを見抜けたという実例を提示する。最後に、生成AIにはないが教員に備わっている視点に着目し、生成AI以上に授業を魅力的にするためには発問力がますます重要になることを提案する。

 

更新日:2024/10/09

第22回 英語教育総合学会

 

日時:1221日(土)1330分~17

場所:オンラインで開催。
https://forms.gle/M5HYxqXz18Qp781C8

にアクセスのうえ、1217日までに参加申込をお願いいたします。1220日頃までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。

 

シンポジウム

AI翻訳とChatGPTを活用した英語教育』

コーディネーター成田一(大阪大学名誉教授)

「文系人材のための具体的生成AI活用法」

安河内哲也(東進ハイスクール・東進ビジネススクール講師・(一財)実用英語推進機構代表理事)

AIが問う英語教育の抜本的見直し:いくつかの問題提起」

山中司(立命館大学教授)

英語学習を再定義する:効果を最大化するChatGPTGeminiの活用事例」

中林くみこ((株)N.fam代表・IELTS公式運営機関IDP Educationセミナー講師)

「生成AIの正体をきちんと承知することなく安易に「活用」に走ってはならない」

大津由紀雄(慶應義塾大学名誉教授・関西大学客員教授)

 

講演概要

「文系人材のための具体的生成AI活用法」

AIという言葉を聞き、文系人材の中には、生成AIの活用をためらう人も多い。しかし、生成AIの中核は大規模言語モデルであり、自然言語でこれを操作するものである。生成AIは、むしろ文系人材にこそ、革命的利便性を与えるものであると言える。私自身、数学にもプログラミングにも精通していないが、Chat GPTを生活や仕事の一部として活用し、生産性と効率を劇的に高めている。今回は、その具体的方法について、現場からのレポートとしてお伝えしたい。

AIが問う英語教育の抜本的見直し:いくつかの問題提起

 工学における人工知能研究者の究極的な目的の一つは、人工的に知能を作ってみることを通して、人間の知能を解明しようとするあくなき構成論的試みである。昨今の生成 AIの登場で人工知能は新たなステージに達し、私たちの知のあり方についていくつかの重要な問いかけをしている。これは外国語教育においても同じである。言語教育に携わる者は、メタ知識として文法を理解し、語彙のバラエティを増やすことで言語コミュニケーションができるようになると暗黙理に想定するが、果たしてこうしたあり方は正しかったのだろうか。本講演では、生成AIの振る舞いをいくつか紹介しながら、人の言語習得について改めて振り返る機会とし、議論の端緒としたい。

英語学習を再定義する:効果を最大化するChatGPTGeminiの活用事例

最新のAIツールが英語学習の効果を向上させる実践的なアプローチを紹介。ChatGPTGemini、それぞれの利点を活かした学習方法を探求し、単なるチャットのやり取りに留まらず、具体的な応用事例を通じて、学習の進め方を示します。今後の英語学習におけるAIの可能性について考察し、参加者が実践に役立てられる知見を得ることを目指します。

「生成AIの正体をきちんと承知することなく安易に「活用」に走ってはならない」

生成AIを英語教育に活用することがある種ブームのようになっているが、 生成AIの内部構造は人間のこころ/脳と本質的に異なること、 生成AIによる言語運用は人間の言語運用と本質的に異なることをきちんと承知しておくことが必要である。今回の講演では、そのことを前提にしたうえで、③ にもかかわらず、生成AIは人間の言語運用の出力にかなりの程度、近似した出力を実現できるのはなぜかという問について考えたい。そして、④ 英語教育・学習関係者が生成AIを「活用」しようとするとき、留意しなくてはいけない点を指摘する。併せて、⑤ 英語教育の目的について再考したい。

 

更新日:2024/05/15

第21回 英語教育総合学会

日時:6月23日(日)13時30分~17時

場所:オンラインで開催

https://forms.gle/xiABRj2tUDquebfW8

にアクセスのうえ、615日までに参加申込をお願いいたします。620日頃までに当日開催用ZoomIDをお知らせします。

 

シンポジウム『生成AI英語教育への活用』

コーディネーター&コメンテーター成田一(大阪大学)

特別講演「大規模言語モデルと日本のAI研究」

辻井潤一(産業技術総合研究所、マンチェスター大学)

「生成AI時代に求められるリテラシーとは何か ChatGPTによるパラダイムシフトと授業活用事例」

安松健(大阪教育大学)

AI・機械翻訳と英語学習: 教育実践から見えてきた未来」

山中司(立命館大学)

英語教育の歩みから考える生成AI英語教育の未来」

上野舞斗(四天王寺大学)

現場報告

「中学生がAI翻訳に慣れ親しむための「ガイダンス的な内容」の授業実践」

佐野理絵(箕面市立第五中学校)

全体討論

懇親会(参加自由)

参加費:無料、参加申し込み期日ほか:学会HP参照。

問い合わせ先:事務局orchid-e@kcc.zag.ne.jp

講演概要

特別講演「大規模言語モデルと日本のAI研究」

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの出現は、人工知能の社会への浸透を加速するとともに、新たな研究開発の可能性をもたらした。その一方で、人工知能技術への過度な期待、その反動としての強い警戒感など、この技術を社会として受容していくのかに混乱も生じている。本講演では、この技術の限界と可能性を議論し、この技術をどのように使っていくべきか、また、その限界を乗り越えていくために、今後、どのような技術開発・研究の方向性をおこなっていくべきかを考える。

 

「生成AI時代に求められるリテラシーとは何か ChatGPTによるパラダイムシフトと授業活用事例」

生成AIをはじめとしたAIテクノロジーの進歩は近年目覚ましいものがあり、様々な社会活動現場に変化をもたらしています。歴史を振り返えれば、様々な技術の発達に伴い、私たち人間において重要となる能力は変遷してきました。それでは、これからの生成AI時代に求められるリテラシーとはどのようなものになるのでしょうか。この議論のためには、生成AIが従来の機械学習とどのように異なるのか、そのパラダイムシフトをまず理解することが肝要になります。データサイエンティストなどの専門家向け教育だけではなく、一般教養・普通科教育におけるAI・データサイエンス教育の重要性が高まっている背景にある生成AIによるパラダイムシフトについて、大学・中高生向けに実践してきた生成AIを活用した授業例とあわせて紹介します。

 

AI・機械翻訳と英語学習:教育実践から見えてきた未来」 ChatGPTに代表される生成AIが社会に激震を与えています。昨今はマルチモーダル情報も扱えるようになってきましたが、元々は大規模言語モデルに基づくAIです。つまりChatGPTの発端は言語であり、したがってその最も得意とするところも言語の扱いです。これはChatGPTが最も影響を与えるであろう教育分野も言語教育であり、外国語教育はまさにその活用が期待される分野の典型であることを意味します。これからの社会を考えるにあたり、生成AIをはじめとするAIテクノロジーとどう共存し、どのような教育を実現するのかについては喫緊の課題です。生成AIが持つ革命的なインパクトは、大学英語教育はもちろん、日本人と英語との関わり方にも一石を投じるものだと思っています。当日はこのような背景をもとに、応用言語学の立場から、特に生成AI英語との関係に焦点を当ててお話しさせて頂ければと思っています。

 

英語教育の歩みから考える生成AI英語教育の未来」

フェートン号事件以降、日本人が英語を学習しはじめて200年以上が経過しています。その中で、しばしば論争の的となってきたのが、「なぜ英語を学ぶのか」という目的論の問題です。誤解を恐れずに、あえて二分して言えば「実用論」「教養論」という観点があります。今回はこの点から「生成AI英語教育」について考えます。実用論的な観点からの実践・活用法には先駆的な例が数多くありますので、こちらは他の先生方にお任せし、わたしは教養論的観点から「生成AI英語教育」をどのように考えていけばよいのかということについて、実践例・活用例を紹介しつつ、皆さんとともにこの問題について考えてまいりたいと思います。

 

「中学生がAI翻訳に慣れ親しむための「ガイダンス的な内容」の授業実践」

 教科書(Sunshine3・開隆堂)の題材としてAIが取り上げられており、生徒の関心も高い。生徒が「AI翻訳」という言葉に対して抱くhigh-techなイメージを端緒として、英語学習意欲を喚起する「ガイダンス的な内容」の授業実践を行った。ねらいは、生徒たちが将来AI翻訳を活用できるよう門戸を広げることである。実践対象は大阪府箕面市内の中学校3年生111名、授業形態は日本人教員1名が32名学級で一斉授業として行った。内容は一つの日本語の文を3種類のAI翻訳(DeepL, Google翻訳、みんなの自動翻訳@Textra)にかけて、結果を比較するというものである。日本語の文は高校入試問題を使用した。

 

今回のシンポジウムは『生成AI英語教育への活用』というものだが、特別講演「大規模言語モデルと日本のAI研究」では生成AIの基盤となる技術「大規模言語モデル」の軌跡をたどる。続く講演では、これを踏まえ、『生成AI英語教育への活用』事例について議論を深めていただきたい。

 

特別講演講師の辻井潤一氏は京都大学助教授の頃、後に京大総長となる長尾真教授と共に、文科省特定研究『言語情報処理の高度化のための基礎研究』(198688)の総括班として数理言語学、言語学、国語学、英語学などの研究者を6つのテーマによる計画研究班6班に分けて研究を託し、最終成果のとりまとめを行なった。この特定研究に参画した研究者が日本の電子通信系企業において、ルールベースの翻訳システムの開発に従事した。私も長尾教授を委員長とする日本電子工業振興協会の機械翻訳専門委員会に学術顧問として参与しNEC、東芝、日立、富士通、三洋、リコー、シャープ、NTTほかの研究部長など企業委員と交流し、各社のシステムを評価し改善点を指摘した。

 

 機械翻訳は、80年代後半のバブル期にルールベースの翻訳が電気通信系の大企業で初期システムが開発されるが、90年代の前半のバブル崩壊により(シャープを除く)大手企業の翻訳システム開発部門が解体される。一方、コンピュータも100300万円台のワークステーションから20万円台のパソコンに替わり、大手では100万円以上していた企業向けの翻訳ソフトがノヴァやロゴヴィスタなどのベンチャー企業から10万円代の個人向けの安価な翻訳ソフトが売り出され、特に9800円の『コリャ英和』の発売を機に翻訳ブームが起こった。

 

その後、機械翻訳の研究は、(長尾教授が80年代中庸に提唱した)用例ベース、そして統計ベースへ変わり、ニューラル翻訳の深層学習を経て、近年の大規模言語モデルのAI翻訳へと飛躍を遂げるが、最初の基礎を築いたのは、科学論文抄録のための日英翻訳システムの開発を目指す通産省の『Muプロジェクト』(8286)、特に文科省特定研究『言語情報処理の高度化のための基礎研究』(8688)である。いずれも京大を中心とする研究だった。その意味で長尾真教授とともに日本の機械翻訳研究の基礎を築いた指導者であり、日本のAI研究の指導者である畏友辻井潤一教授(産業技術総合研究所に設立された人工知能研究センター・センター長で、マンチェスター大学教授を兼務)を迎えたシンポジウムを開催することは誠に意義深い。参加される皆さんも啓発されるところが大きいと思う。

 

英語教育総合学会会長 成田一(大阪大学名誉教授)